特別な実績がない学生たちの共通点
就職活動を始めると、よく耳にするのが「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)がない」「特別な経験がない」「自分は普通すぎてアピールできない」という悩みです。これは珍しいことではなく、実に多くの学生が同じ思いを抱えています。実際、部活の全国大会出場や長期インターン経験、起業経験などがある学生は少数派です。
つまり、「普通」であることは決してマイナスではなく、むしろ就活市場では多数派に該当します。では、その“普通の学生”がどうやって最初の内定を獲得するのか。その鍵を握るのが、「物事の捉え方」と「視点の変え方」です。
選ばれる学生の多くが実績より“考え方”で差をつけている
結局、人事は「一緒に働きたいか」を見ている
どんなに優れた実績を持っていても、それが独りよがりであったり、組織との協調性に欠けていたりする場合、人事の評価は上がりません。逆に、特筆すべき実績がなくても、「周囲との連携を大切にできる」「考え方が柔軟」「地に足がついている」といった印象を持たれる学生は、面接官の目に魅力的に映ります。
つまり、面接官が最終的に判断しているのは、「この人と一緒に働いたとき、チームに良い影響をもたらすかどうか」という“人柄の総合評価”です。
アピール材料は「特別さ」ではなく「日常の積み重ね」
普通の学生にとって、就活で語るべき内容は「特別なエピソード」ではなく「当たり前の行動をどのように続けたか」にあります。たとえば、
コンビニバイトで1年半働き続け、リーダー業務を任された
サークルでは役職がないが、後輩指導を陰でサポートしていた
授業を通じて一貫して苦手な科目に取り組み、克服した経験
こうした取り組みも、就活では十分なアピール材料になり得ます。重要なのは「その行動から何を学び、それが仕事にどう活かせるか」を語れることです。
視点を変えれば「普通」が「強み」になる
自分を“他者との比較”ではなく“過去の自分との比較”で見る
「自分には実績がない」「あの人は留学していた」「○○くんは起業していた」と他人と比較してしまうと、自信を失いがちです。ですが、企業が評価するのは“スタート地点”ではなく“伸びしろ”です。
過去の自分と比べて何を成長させてきたか。どんな努力をしてきたか。それを自覚し、言語化できるようになると、アピール材料は一気に増えていきます。たとえば、
人前で話すのが苦手だった → プレゼンを経験して克服しつつある
作業が遅かった → バイトでスピード意識を持ち改善した
こうした視点の切り替えによって、「普通の学生」が「成長できる学生」へと見え方が変わっていきます。
面接官は“成長の可能性”を見ている
特に新卒採用では、即戦力よりもポテンシャル(伸びしろ)が重視されます。だからこそ、「完璧な学生」である必要はなく、「課題を認識し、それに向き合い、改善した経験があるか」が問われるのです。
最初の内定を得るために必要な考え方
「勝てる場所」を見極める
“普通の学生”がいきなり一流企業や総合商社に挑んでも、インターンからの囲い込みや学歴フィルターなど、構造的に不利な場面が多くなります。そうした中で、早期に最初の内定を得るためには、「どこに挑むか」の戦略が不可欠です。
学歴や実績より人柄重視の企業
成長段階にある中堅・ベンチャー企業
専門性よりも柔軟な対応力を評価する業界
こうした企業を狙えば、“普通の学生”にも十分チャンスはあります。むしろ、大手にこだわらず自分に合ったフィールドを選ぶことで、内定獲得率は大きく上がるのです。
“普通の学生”が最初の内定を得るための準備のステップ
自己分析は「得意・不得意の棚卸し」から始める
自己分析という言葉に苦手意識を持つ学生は少なくありません。「深く考えなきゃいけない気がする」「正解がないから迷う」と感じる人もいるでしょう。しかし、自己分析は難しく考える必要はなく、自分の“特徴”や“パターン”を知ることから始めれば十分です。
たとえば、
得意なこと:人と話すことが好き、作業を丁寧にこなせる
苦手なこと:スピーチ、短時間での判断、初対面との関係構築
好きな環境:落ち着いた職場、明確な指示がある状況
嫌いな環境:競争が激しい、結果だけで評価される職場
こうした棚卸しを進めていくことで、自分に合う企業や仕事のスタイルが少しずつ見えてきます。
自分に合った職種・企業像を描く
上記のような特徴を整理できたら、次は「どのような職種や会社なら自分が活躍できそうか」を考えます。たとえば、「一人で黙々と取り組むのが得意」なら事務職や管理部門の仕事が向いているかもしれませんし、「人と関わるのが好き」なら営業や人事、販売職の適性があるでしょう。
企業の規模も重要です。「成長段階のベンチャーで幅広く経験したい」のか、「安定した環境でじっくり力をつけたい」のか、価値観に応じて方向性を選ぶことができます。
「勝てる就活」のための企業選びのコツ
中小企業やベンチャーの情報収集を怠らない
大手企業に比べて中小企業やベンチャーは情報量が少ないこともあります。しかし、それは逆に「知っている人が少ないからこそ競争率が下がる」というメリットでもあります。
たとえば、
地方で活躍しているニッチ企業
BtoB(企業向け)サービス中心で一般知名度が低い会社
業界シェアは高いが採用人数は少ない企業
こうした企業は、知られていないだけで業績も安定し、成長もしている優良企業が多く存在します。大手ナビサイトだけでなく、自治体や業界団体のWebサイト、逆求人サービス、合同説明会などを活用し、情報を広げていくことが重要です。
「最初の内定」を軸に受ける順序を決める
就活の全体戦略として、「最初の1社から内定をもらう」ことを目標にする場合、受ける企業の順番が極めて重要になります。たとえば、
練習も兼ねて、入りやすい企業から受けてみる
面接の練習ができた段階で本命にチャレンジ
本命を最後に持ってくることで、自信を持って臨める
というように、段階的に受けていくことで、自分の話し方やアピールポイントが磨かれ、選考通過率も高まります。
アピール内容を準備する具体的な方法
自己PRの構成は「結果」より「過程」を重視する
普通の学生が自己PRを考えるとき、インパクトのある“成果”がないことに悩みがちです。しかし、企業が見ているのは「結果」よりも「そこに至るまでのプロセス」です。
たとえば、コンビニバイトで「売上アップに貢献した」という実績よりも、
問題意識を持ったきっかけ
自ら改善策を提案した行動
周囲を巻き込んだ工夫
その結果、どう変化したか
というような思考の流れや働きかけを伝えることのほうが重要です。
ガクチカは「小さな取り組み」を深掘りする
ガクチカも同様で、「大会で優勝した」「役職に就いた」などの華やかな実績がなくても問題ありません。たとえば、ゼミでの活動、授業のプレゼン、アルバイトでのシフト管理、サークルの準備担当なども立派な題材になります。
その中で、「なぜその役割を引き受けたのか」「どんな課題があったか」「自分なりにどんな工夫をしたか」「その結果どうなったか」を整理すれば、深みのあるエピソードになります。
面接を想定した準備を早めに始める
模擬面接やフィードバックの活用
面接の通過率は、「何を話すか」より「どう話すか」に左右されることが多くあります。だからこそ、自分では良いと思っている自己PRも、他人に話してみることで改善点が見えてきます。
大学のキャリアセンター、就活塾、オンライン面談サービスなどを使って、模擬面接やフィードバックを受けることは非常に効果的です。
本番に慣れるための「実践型エントリー」
最初は企業説明会への参加や1day仕事体験など、「選考ではない機会」からエントリーを始めるのも良い方法です。社会人と話す経験が増えれば増えるほど、自然にビジネスの視点や言葉遣いが身につき、自信も育っていきます。
内定を獲得した“普通の学生”の行動と考え方
就活の成功者は「すごい人」ではなく「準備が早かった人」
就活がうまくいっている学生を見て、「あの人は特別だから」と距離を感じてしまう人も多いかもしれません。けれど、実際に内定を早く獲得する人の多くは、必ずしも飛び抜けた能力を持っているわけではありません。共通するのは、“早く動いた”という一点に集約されます。
具体的には以下のような行動をしていました。
3年生の夏までに自己分析を完了
ナビサイト解禁前から逆求人やイベントに登録
OB訪問や説明会で業界理解を深めていた
模擬面接を複数回受け、自分の癖を把握していた
これらは誰にでもできる準備です。つまり、“普通”の学生でも、早く動いた人から順に就活の仕組みに慣れ、自分のペースで進めることができたのです。
「動いた人」と「迷っている人」の差はどこで生まれるのか
情報収集に偏りがあると就活に不安が残る
何をすればいいのかわからないまま時間だけが過ぎていく学生の多くは、「周りの就活仲間」との会話に頼りすぎていたり、SNSや口コミサイトだけで企業情報を集めてしまう傾向があります。
これにより、
ネガティブな情報ばかりに影響を受けてしまう
偏った企業群しか見えてこない
行動を起こす前に「失敗が怖い」と思ってしまう
という状態に陥り、結果的にエントリーを先延ばしにしてしまうのです。
一方で、内定を得ている学生は「情報を取りに行く」姿勢が強く、以下のような手段をフル活用しています。
キャリアセンターの個別相談
業界研究セミナー・業界横断の合同説明会
学内外の就活イベント(逆求人型など)
社員との直接面談、OBOG訪問
これらは受け身でいるだけでは得られない情報です。自分から動くことで、就活に必要な判断材料を積み重ねることができます。
アウトプットを繰り返すことで「見せ方」が洗練される
初期段階の失敗が“質の高い自己PR”を生む
普通の学生が面接やエントリーシートでつまづくのは、ごく当たり前のことです。しかし、それを“失敗”で終わらせるか、“改善材料”にできるかで差がついていきます。
たとえば、以下のような改善ステップが有効です。
書いたESを就活仲間や第三者に添削してもらう
面接で「伝わっていない」と感じた点を言い回しごと変える
模擬面接や録画面接で自分の表情・話し方を確認
面接の質問と自分の回答を振り返り、準備資料を更新する
このプロセスを繰り返すことで、自分でも気づいていなかった強みや伝え方のクセが見えてきます。特に、「話が抽象的」「結論が曖昧」といった弱点を放置しないことが、通過率を大きく左右します。
他人と比べるのではなく「昨日の自分」と比べる意識
内定を得るまでの道のりには、どうしても他人の進捗が気になります。しかし、周囲と比べて焦っても意味はありません。むしろ、「昨日より成長できたか」「前回よりうまく話せたか」を基準にすることで、自分のペースを守りつつ前進できます。
たとえば、
先週の模擬面接では話が長すぎた → 今週は簡潔に話すことを意識した
前回のESではエピソードが弱かった → 別の体験を軸にして練り直した
このような“地道なブラッシュアップ”を続ける学生こそが、安定した就活結果につながっています。
「最初の1社」を得ると自信と選択肢が広がる
内定が出ると一気に精神的な余裕が生まれる
最初の1社から内定が出ることで、就活の進め方は一変します。大きな理由は、「心理的な余裕が生まれること」です。
焦りがなくなり、本命企業にも自信を持って臨める
他の企業を「選ぶ」目線が持てる
面接での余裕が評価につながる好循環が生まれる
このように、早い段階で1社の内定を獲得することは、就活全体の質を高めるうえで非常に大きな意味を持ちます。
最初の内定を“ゴール”にしないマインドも大切
ただし、内定が出たからといって就活をやめてしまうと、後悔が残る可能性もあります。特に、「妥協した会社だった」「他の選択肢を見ないまま決めてしまった」という声は少なくありません。
大切なのは、「納得できる就活」になるまで、自分なりの基準を持って進めることです。そのためにも、最初の内定は「就活を安定させるための手段」であり、決してゴールではないという意識を持つ必要があります。
“普通の学生”が納得のいく内定を獲得するためにやるべきこと
最後に差がつくのは「判断力」と「決断力」
就活の最終盤になると、ただ内定を取るだけではなく、「自分にとって本当に合う会社を選べるか」が重要になってきます。その際に問われるのが、これまでの行動と情報を踏まえた“判断力”と“決断力”です。
判断力とは、「会社の魅力とリスクを冷静に見極める力」。決断力とは、「選んだ道を正解に変えていく覚悟を持つ力」です。
たとえば、最初に出た内定に対して、
「志望度は高くないけど、安心できる会社」
「条件面では他より良いが、仕事内容はピンとこない」
「働いている人の雰囲気が良い、でも業績がやや不安定」
など、複雑な要素が絡み合います。そうしたときに、自分なりの価値観(働きやすさ、やりがい、成長性など)を軸に判断し、「この会社に決める」と腹を括ることが、納得感につながります。
就職後を見据えた選択をする
「最初の会社はスタート地点」と考える
たとえ理想通りの企業でなくとも、最初の会社で得られる経験は、その後のキャリアの土台になります。「ここで何を学べるか」「どんな社会人になれるか」という視点で会社を見ることができれば、内定の重みも変わってくるはずです。
また、「3年以内に辞める人が多い」とよく言われますが、それは必ずしも失敗ではありません。むしろ、最初の職場で自分の強みや仕事のスタイルを見つけたうえで、次のステップに進んでいく人も多いのです。
だからこそ、「この会社に入ると何が得られるか」を明確にすることが、内定承諾の判断軸になります。
「今の自分」だけで会社を選ばない
学生時代の経験やスキルだけで自分を評価するのではなく、「3年後、5年後にどんな自分になっていたいか」を考えることが、選択の質を高めます。
たとえば、今は自信がないけれど、
コミュニケーション力を鍛えて営業職で成果を出したい
調整役としてチームを支えるような仕事をしたい
地方創生に関わるビジネスを実践的に学びたい
といった“なりたい将来像”を描くことで、その道筋に合う企業が見えてくるはずです。
最終的に大事なのは「行動し続けたかどうか」
就活に必要なものは“才能”ではなく“継続力”
最初の内定を得るために求められるのは、特別なスキルや経験ではありません。自分なりに考え、準備し、行動を続けた人が最後には笑います。逆に、情報を集めすぎて迷い、動けなかった人ほど「就活はうまくいかなかった」と感じがちです。
少しずつでも自己分析を進めたか
苦手な面接も練習を重ねたか
エントリー数だけでなく、1社1社を丁寧に見たか
フィードバックを次に活かす工夫をしたか
こうした“積み重ね”が、普通の学生を「内定を取れる学生」に変えていきます。
内定を取ったあとこそ、成長は始まっている
最初の内定を得た瞬間から、就活は終わりではなく“社会人としての第一歩”が始まります。その会社でどんな学びを得て、自分のキャリアをどう築いていくかは、入社後の意識と努力によって決まります。
内定はゴールではなく、スタートラインです。「最初の一社」を丁寧に選び、入社までにできる準備(業界知識、社会人マナー、ビジネス基礎)を進めていくことで、社会人生活の最初の1年が充実したものになります。
まとめ:特別なことをしなくても、最初の内定は手に入る
自己分析は、自分の特徴を「言語化」することから始まる
視野を広げ、中小企業や知らない業界にも目を向ける
情報は“待つ”のではなく“取りに行く”姿勢が重要
面接やESは、失敗を繰り返すことで精度が上がる
最初の内定は、就活を安定させる“きっかけ”になる
内定承諾は、「今の自分」と「将来の自分」の両面から判断する
最後に勝つのは、行動を止めなかった“普通の学生”である
どんな学生でも、適切な準備と継続的な行動があれば、最初の内定を掴むことは可能です。そして、その内定が、その後のキャリアの第一歩になります。就活という不確実な時間に、自分を信じて前進できた学生こそが、社会に出ても成長し続けられる人材になるのです。