最初の内定につながるESとは何か

Post Thumbnail

最初の内定につながるESとは何か

そもそもESの目的は「足切り」ではない


エントリーシート(ES)は、多くの学生が「通過すべき関門」や「ミスをしてはいけない書類」として構えがちです。しかし、本質的にはESは単なる通過儀礼ではなく、「あなたという人物が企業にとって価値があるか」を見定めるための、最初の“提案書”です。

ESの本質は、「あなたの魅力がこの会社にどう役立つか」を伝えるドキュメントです。書き方のテクニック以前に、まずはこの構造理解がなければ、企業に刺さる内容にはなりません。

「自分の魅力」ではなく「企業が求めている魅力」を軸に書く


多くの学生がやりがちな間違いは、「自分のすごい経験をアピールしよう」とすることです。ですが、企業側が見ているのは、“その経験が自社にとってどう活かせるか”という観点です。

企業目線を持たないESは、いくら自己PRが立派でも評価されません。

たとえば、「体育会で主将を務めた」「アルバイトで売上を1.5倍にした」といった経験も、その会社がチームワークを重視する会社なのか、数字管理を重視する会社なのかによって、アピールの刺さり方はまったく変わってきます。

なぜ多くのESが似た内容になるのか


フォーマット依存による没個性化


ネット上には、ESの“テンプレ”や“内定者の例文”があふれています。確かに参考にはなりますが、それに引っ張られてしまうと、どれも同じような表現になり、個性が死んでしまうというリスクがあります。

「困難を乗り越えた経験を書こう」

「リーダー経験があれば有利だ」

といったルールに縛られると、本来自分が伝えるべき経験が埋もれてしまうのです。

企業理解が浅いために内容が薄くなる


ESの中でも特に「志望動機」が薄くなりがちなのは、企業理解が十分でないまま書き始めてしまうからです。

ホームページをざっと見た程度

社名と業界名しか知らない

似たような企業に同じ動機を使い回す

このような状態では、企業側から見て「なぜうちなのか?」という質問に答えていないESにしかなりません。

書き始める前にやるべき3つの準備


① 自分の強みを「構造的に」整理する


ESで自分をアピールするには、「自分の強み」が何なのかを言語化する必要があります。しかし、その強みは単なる性格ではなく、行動特性や考え方の傾向として構造化しておく必要があります。

たとえば、

「挑戦心がある」→どんな状況で、どんな選択をし、どう行動したか

「調整役が得意」→どんなチームで、どう周囲と関わり、何を成し遂げたか

というように、性格→行動→成果の流れで、具体性を持たせることが重要です。

② 自分の経験を企業の求める人物像と照らし合わせる


企業が求める人物像(=採用基準)は、選考情報や社員インタビューから読み解くことが可能です。

たとえば、「主体性」「協調性」「課題解決力」といったキーワードが多く見られる企業に対しては、自分の中でもそれらを体現したエピソードを選ぶべきです。

自己PRやガクチカは、企業の“問い”に対する“自分の答え”であるべきです。

③ 同じ内容でも「構成と視点」で差がつく


同じような経験をしていても、「どう伝えるか」でESの印象は大きく変わります。たとえば以下の2パターン:

Aさん:アルバイトで売上を伸ばしたことを数字重視で語る

Bさん:同じアルバイト経験を通じて、組織の課題発見力や提案力を強調

どちらも事実は同じでも、Bさんのほうが思考力や再現性が伝わりやすくなります。視点と構成こそが、ESで最も差が出るポイントなのです。

最初の内定を近づけるESの方向性を定める


“選ばれるES”とは何かを自分なりに定義する


就活初期の段階で、いきなりESを書き始めるのではなく、まずは「どんなESが企業に選ばれるのか?」という問いに、自分なりの答えを持つことが大切です。

以下のような視点が軸になるでしょう:

「この学生に会ってみたい」と思わせるエピソードの具体性

再現性のある行動パターン(=入社後の活躍イメージ)

志望動機の納得感と独自性

表面的でない企業理解に基づいた内容

こうした視点を持っているかどうかで、ES全体の質は大きく変わってきます。


自己PR・ガクチカで伝えるべきことは何か


評価されるのは“結果”よりも“プロセス”


就活生が最も悩むのが、「自己PR」や「学生時代に力を入れたこと(通称:ガクチカ)」です。これは企業がエントリーシートで重視するポイントでもあります。

ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、「結果」だけを語っても企業は評価しないということです。企業が見たいのは、その結果に至るまでにどんな思考と行動を取ってきたかです。

たとえば、「部長として大会で優勝した」と書いても、それは“事実”に過ぎません。そこに至るまでに何を考え、どう周囲を巻き込み、どのような障害を乗り越えたかが評価のポイントになります。

自己PRに必要な4つの構成要素

① 強みの一言キャッチ


最初の一文で、「私の強みは〇〇です」と言い切ることが、読み手にテーマを伝えるうえで効果的です。このとき抽象的すぎず、かつ汎用的すぎない表現を使うと印象に残りやすくなります。

NG例:「私の強みは真面目さです」
OK例:「私の強みは、課題に対して冷静に構造化して対応策を提案できる力です」

② 強みを裏付ける経験


キャッチで示した強みを裏付けるために、具体的な経験を1つだけ選びます。複数エピソードを盛り込むと焦点がぼやけるため、一点突破で構成するのが鉄則です。

この経験は、目立つ実績である必要はありません。大切なのは、行動に一貫性や工夫、成長のプロセスが見えることです。

③ 結果・成果


経験を語るうえで、ある程度の成果を記載することも重要です。結果がすべてではありませんが、努力が何にどうつながったかを明示することで、取り組みの信頼性が高まります。

数字が使える場面では積極的に使いましょう。ただし、「数値だけが評価対象ではない」ということも忘れてはいけません。

④ 強みの再現性・応用性


最後に、企業が最も知りたいのは「この強みが入社後に活かせるか?」という点です。
そのため、「この強みはどんな状況でも発揮できる」「貴社の〇〇の業務でも活かせると考えている」といった再現性や応用可能性を示す締めくくりを入れることで、自己PRとしての完成度が上がります。

ガクチカで見られている5つの評価軸


① 主体性


企業が特に重視しているのは「どれだけ自分で考えて動いたか」です。たとえば、「先輩に言われたことを頑張った」では受け身と見なされます。「自分がどう状況を捉え、どう動こうとしたか」が見える構成にしましょう。

② 困難への向き合い方


どんなエピソードにも、壁や課題が出てくるはずです。重要なのは、その時にどう対処したか。逃げずに取り組んだ姿勢、工夫した思考などを具体的に書くことで、地頭力や成長志向も伝わります。

③ 周囲との関係性


どんな取り組みでも、完全な単独行動というケースは稀です。仲間との協力、上司や顧客とのやりとりなど、他者との関係性の中でどんな役割を担ったのかが伝わると、チーム適応力が評価されます。

④ 継続性・粘り強さ


一時的な成果よりも、「継続的に努力したか」「地道なことをやり続けたか」の方が信頼されます。華やかな成功よりも、長く取り組んできた経験のほうが選考で強く刺さる傾向にあります。

⑤ 振り返りと学びの深さ


経験から何を学び、次にどう活かしたかをきちんと示せると、「この学生は将来伸びそうだ」と思ってもらえます。ただの結果報告で終わらせず、自分なりの内省を必ず最後に入れるようにしましょう。

自己PRとガクチカを構成するステップ


ステップ1:エピソードを1つ選ぶ


最も伝えたいテーマに合う経験を1つに絞ります。汎用的なテーマ(リーダー経験など)よりも、「自分だけが語れるストーリー」に価値があります。

ステップ2:行動の流れを5W1Hで整理する


いつ:何年生のいつ頃か

どこで:どんな組織や場所で

誰と:どんな関係者と関わり

なぜ:どんな課題に直面し

何を:どんな行動を取り

どう:どうやって成果を出したか

この整理をすることで、構成に抜け漏れがなくなり、読み手にも伝わりやすくなります。

ステップ3:企業に合わせて書き換える


すべての企業に同じ自己PRやガクチカを出すのは非効率です。業界や企業の特性に合わせて、

「この点を強調しよう」

「この言い回しはこの会社に合わない」

など、企業別にニュアンス調整を加えることで、完成度がさらに高まります。

志望動機の完成度がESの評価を左右する


志望動機が浅いとどう見られるか


どれだけ魅力的な自己PRやガクチカを書いても、志望動機が薄ければESは評価されません。「この会社である理由」がなければ、企業は「ほかの会社でもいいのでは?」と考えるからです。

たとえば、「社会に貢献したいと思ったから」「人と関わる仕事がしたいから」などの理由は、業界や企業を問わず当てはまってしまいます。これでは、本当にその会社を選んだ理由が伝わらず、熱意も信頼も感じられません。

志望動機は「独自性+論理性」で差がつく


企業は、志望動機から以下のようなことを見ています。

会社のことをよく調べているか(情報の深さ)

自分の価値観や経験と接続できているか(関連性)

入社後のイメージが描けているか(具体性)

そのため、評価される志望動機とは、「その会社でなければならない理由」と「自分との接点」を論理的に説明し、独自の視点で語れているものです。

志望動機の構成:3つの要素で組み立てる


① 企業に対して抱いた魅力(一次情報ベース)


まずは、その企業のどんな点に惹かれたのかを明確にします。ここで重要なのは、ホームページに書いてある言葉をそのまま引用しないことです。

評価されるのは、「なぜそのポイントが自分にとって魅力なのか」「どこでその情報を得たのか」という視点まで含めて語れるかです。

② 自分の価値観・経験と接続する


企業の魅力を語るだけでは、単なるお世辞で終わってしまいます。そこに自分の過去の経験や価値観を重ねることで、志望理由に“納得感”が生まれます。

たとえば、

「チーム全体を支える文化に惹かれた。自分もサークル活動で裏方として周囲を支えることにやりがいを感じてきた」

「若手の挑戦を支える制度があると知り、自分もゼミ活動で新しい企画に挑戦してきた経験と通じるものがある」

といったように、自分自身と企業の接点を明確に示す構成が必要です。

③ 入社後のビジョンや貢献意欲を伝える


志望動機の締めくくりとして、「この会社でどんなことを実現したいか」「どう貢献できるか」を具体的に述べることが求められます。

「入社後は〇〇領域での事業推進に関わり、△△のスキルを活かして貢献したい」

「御社の□□な社風のもとで、自分の××という特性を伸ばしながら、顧客価値の創出に挑戦したい」

といったように、入社後のイメージを提示することで、長期的な志向や現実感のある熱意を伝えることが可能になります。

志望動機の差を生む企業理解の深め方


「調べたこと」ではなく「読み取ったこと」を書く


企業研究は「調べる」だけで終わってはいけません。「読んだ情報から何を感じたか」「自分との接点をどう見出したか」が伝わることで、“調査力”ではなく“洞察力”が評価されます。

たとえば、会社説明会で語られていた社員の言葉をただ引用するだけでなく、

「〇〇という発言が印象的だった。自分の□□という考え方とも共通しており…」
といったように、自分の考えとつなげる姿勢がポイントです。

企業理解を深めるための情報収集ルート


評価される志望動機を書くには、浅い調べ方では限界があります。以下のようなルートを活用して、“質の高い一次情報”を得ることが重要です。

OB/OG訪問:社員視点のリアルな価値観や雰囲気を把握できる

社員インタビュー記事やYouTube公式チャンネル:現場の声や企業文化が見える

説明会でのQ&Aや対話型セッション:表に出ない価値観や組織風土を知れる

競合他社との比較:その企業だけの特徴を浮き彫りにできる

こうした情報を収集し、それを自分の言葉で語ることが“本気度”として伝わります。

志望動機は「文章力」ではなく「思考力」で決まる


書く前に「なぜこの会社なのか」を自問し続ける


志望動機が弱い人の多くは、「言葉選び」で悩みますが、本質的な課題はそこではありません。“なぜ自分はこの会社に行きたいのか”という問いに、自分で明確に答えられるかがカギです。

その問いに本気で向き合った学生は、自然と“深い志望動機”を構築できます。形式やテンプレートに頼るのではなく、自分の言葉で語る姿勢が伝われば、文章が少し拙くても心を打ちます。

志望動機は“使い回す”ものではない


実際には多くの企業にESを出すことになるため、志望動機をある程度テンプレート化したいと考える人もいるかもしれません。

しかし、企業側も“テンプレ感”を見抜きます。たとえ使い回すとしても、

企業理念

主力事業

働く人の姿勢

キャリアパスの制度

など、一社ごとに刺さるポイントだけは必ずカスタマイズすることが必要です。


人事が“最後まで読みたくなる”ESの書き方


表現における配慮が評価を左右する


書かれている内容が優れていても、伝わりづらい表現や読みにくい構成では、採用担当者に届きません。文章の表現ひとつで印象は大きく変わり、熱意が誤解されたり、論理性が不明瞭に見えたりするリスクがあります。

大切なのは、自分が「伝えたいこと」ではなく、「相手に伝わるかどうか」で判断することです。誤解を生まない表現、読みやすい構成、適切な文章量のバランスを保つことで、初めてESが“読まれるもの”になります。

冗長表現を削り、簡潔にする


以下のような言い回しが多用されている場合、伝えたいことがぼやけてしまいます。

「〜において私は〜という経験をしたことがあります」

「〜を通じて、多くの学びを得ることができたと思います」

これらは、短く明確に置き換えるだけで、印象が大きく変わります。

「〜で〇〇を経験しました」

「〜を通じて△△を学びました」

冗長な言い回しを削り、主語と述語を直線的に結びつけることで、意図がすっきりと伝わる文章になります。

読みやすさはレイアウトでも変わる


ESが読まれるかどうかは、見た目の印象も大きく関わります。文字が詰まりすぎていたり、段落が長く続いていたりすると、それだけで読む側の集中力を奪ってしまいます。

一文は40〜60文字を意識する

一段落は3〜5行に収める

接続詞や段落間でリズムを整える

こうした工夫を重ねることで、読み手の負担を減らし、内容に集中してもらいやすくなります。内容を伝える手段としての文章であることを常に意識することが大切です。

他者視点を取り入れたチェック体制の重要性


自分ひとりでは気づけない“違和感”


文章を何度読み直しても、同じ視点では限界があります。特に、自分の経験や思いをベースに書いた内容ほど、第三者にとっては伝わりにくくなりがちです。

前提の共有が足りない部分

ロジックが飛躍している箇所

感情的になりすぎている表現

これらは、客観的な視点がなければ気づくのが難しい問題点です。信頼できる友人やキャリアセンター、OBOGなどに見てもらい、率直なフィードバックを得ることが文章の完成度を上げる鍵になります。

音読とプリントアウトでの最終確認


文章の流れや違和感の発見には、音読が非常に有効です。黙読では気づきにくいリズムの悪さや表現のくどさが、音に出すことで浮かび上がります。

また、Web上での確認に頼らず、一度印刷して読むことで視点が切り替わり、ミスの発見率が高まります。画面では見落としていた文字のズレや漢字の間違い、同じ表現の繰り返しなどにも気づけます。

細部の“完成度”が全体の印象を決める


誤字脱字や固有名詞のミスは信頼を損なう


基本的なミスほど、ES全体の信頼性を損なう要因になります。特に、

企業名の表記ミス

人名・部署名の誤記

敬語の誤用

といった部分は、たとえ内容が良くても大きな減点対象となることがあります。誤字脱字だけでなく、相手に対しての配慮や丁寧さを欠いた印象を与えるためです。

提出形式と締切の管理も抜かりなく


ESは内容だけでなく、提出形式の遵守も重要です。指定がある場合には、

WordやPDFのファイル形式

ファイル名のルール(例:2025_Es_SatoTaro.pdf)

フォントや文字サイズの制限
などに注意を払いましょう。

さらに、締切ギリギリの提出は避け、少なくとも前日までに提出を完了させることが、安全かつ信頼を損なわない対応となります。

伝える力が最初の内定への扉を開く


就活においてESは、最初に自分を伝える手段であり、「一対一の対話の始まり」です。どれだけ優れた経験や考え方を持っていても、それが文章で伝わらなければ、内定には結びつきません。

相手の読みやすさを最優先に設計する

経験や思考を、論理と感情でバランスよく描く

誤解を生まない構成と表現で届ける

このように、ESは「見せる」よりも「伝える」ことを意識して書き上げることが、書類選考通過率を大きく左右します。丁寧に、そして相手の立場に立って設計されたESは、確実に他の応募者との差を生みます。

一枚のESから始まる内定への道のり。そのスタート地点を軽視せず、最後の一文までこだわって仕上げてください。就活における最初の一歩は、常に“伝える力”の精度で決まります。

この記事を友達におしえる!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です