就職活動で最も多くの学生が悩むポイントが「自己PR」です。
何をアピールすればいいのか、どのエピソードを使えばいいのか、正解がわからないまま手探りで書いてしまう人も多いでしょう。
特に“最初の内定”を目指す段階では、「手応えがない」「何が悪いのかわからない」といった壁にぶつかりやすくなります。
しかし実際には、自己PRの書き方には“人事に受けやすい型”が存在します。
企業が新卒に求めているのは、高度なスキルや実績ではなく、「仕事において活かせる可能性のある行動特性」です。
この行動特性を、的確に伝えることができれば、最初の内定にグッと近づきます。
本記事では、第一回として「人事に受けやすい自己PRの基本構造」と「評価されやすい力の特徴」について、実践的に掘り下げていきます。
自己PRで評価される“力”とは何か?
「すごい経験」よりも「社会人として活かせる行動」
就活生の多くが勘違いしがちなのが、「珍しい経験」や「目立つ実績」を語らなければ評価されないという思い込みです。
しかし、人事が見ているのは「学生時代の実績」そのものではなく、その裏にある「行動の質」と「思考の習慣」です。
たとえば:
イベントの企画をした → 企画力よりも、周囲を巻き込む力が見られている
アルバイトで表彰された → 表彰よりも、改善に取り組む姿勢や継続力が見られている
このように、「どんな活動か」ではなく、「どう行動したか」「どんな姿勢だったか」が評価の中心になります。
評価されやすい“5つの力”
人事担当者が評価しやすい自己PRには、共通して以下のような“社会人基礎力”に基づいた要素が含まれています。
主体性
協調性
課題発見・改善力
目標に向かう粘り強さ
自己成長意欲
これらは、業界・職種を問わず広く求められる能力です。
それぞれの力について、次回以降の記事で深掘りしていきますが、今回はこの中でも最も基本的かつ重要な「主体性」について詳しく解説します。
「主体性」がある人は、内定に一歩近づく
就活において、「この人は採用後、自走してくれそうだ」と人事が思えるかどうかが、大きな評価ポイントになります。
その基準となるのが「主体性」です。
主体性の定義とは?
「言われたからやる」ではなく、「自分で決めて動ける」かどうか
企業にとって新卒採用とは、将来への投資です。
そのため、自ら考えて動ける人=主体性を持った人材は、高く評価されます。
主体性とは:
誰かに言われる前に行動を起こす
自分の意志で判断し、実行する
状況を変えようとする意識を持つ
このような行動が自己PRの中で描かれていれば、企業は“将来の戦力”として期待を抱くのです。
主体性を伝える自己PRの構成
では、主体性を自然に伝えるには、どのような流れで自己PRを組み立てれば良いのでしょうか。
以下の5ステップを軸に構成すると効果的です。
① 状況説明(どんな環境で)
例:「大学のゼミで、学外向けの研究発表を企画することになった際」
② 課題の発見(何に問題意識を持ったか)
例:「例年、準備が直前まで遅れがちで、質が下がっていると感じていた」
③ 主体的な行動(自分から何を提案・実行したか)
例:「その状況を変えようと、進行管理の仕組みを自ら提案し、共有ツールを整備した」
④ 結果と周囲の反応
例:「準備の遅延が解消され、初めて全チームが期限内に資料を完成。メンバーからも『やりやすくなった』との声をもらった」
⑤ 学び・今後への活かし方
例:「自分の行動一つで組織の動きが変わることを実感し、今後も周囲を見て行動する姿勢を大切にしたい」
このように構成すれば、強調しなくても自然と「主体性がある学生」という印象が伝わります。
主体性をアピールする際の注意点
自己中心的な印象を与えないことが重要
主体性を強調しすぎてしまうと、「勝手に突っ走るタイプ」と誤解されてしまうリスクもあります。
そのため、
周囲との相談・協力の描写を入れる
反発ではなく“提案”という形で行動したことを示す
成果が“チーム全体に良い影響を与えた”ことを伝える
といった点を意識することで、バランスの取れた印象になります。
「自分の意思で動ける人」は、最初の内定に近い
最初の内定を手にする学生の多くは、共通して「行動の主体者」であるという傾向があります。
アルバイト、部活、ゼミ、学園祭──どんな経験でも構いません。
その中で、自分が“何を考え、どう動いたか”を整理し、伝える準備をすることが大切です。
協調性を「当たり前」で終わらせないために必要な視点
「協調性がある」と聞くと、多くの人は「誰とでも仲良くできる」「和を乱さない」「人間関係が円滑」という、ある種の“性格的な柔らかさ”を連想します。しかし、就活において評価される協調性とは、単なる“優しさ”や“控えめさ”ではありません。
企業が本当に求めているのは、「チームにおける成果の最大化に貢献できる力」としての協調性です。それは、空気を読んで黙っていることでも、無理に意見を合わせることでもありません。
協調性の誤解:なぜ自己PRで埋もれるのか?
ありふれた表現になりやすい「協調性」
多くの学生が「協調性があります」と自己PRで書いていますが、人事から見ると“最も差がつきにくい”表現です。その理由は、以下のような曖昧な伝え方に終始してしまうからです。
「周囲と良好な関係を築いてきました」
「相手の意見を尊重します」
「チームワークを大切にしています」
これらの言葉だけでは、どんな行動をしてきたのか、どんな価値をチームにもたらしたのかが伝わりません。結果として、“印象に残らない自己PR”になってしまいます。
就活で評価される「協調性」は“能動的”である
協調性=受け身ではなく、チームを動かす関係構築力
企業が評価する協調性は、以下のような要素を含んでいます。
チームの空気や関係性を良くするために、自ら働きかける力
意見がぶつかる場面で、橋渡し役になれる力
自分と異なる考えを理解し、受け入れたうえで行動できる力
つまり、評価される協調性とは「自ら関係性を築きにいく姿勢」なのです。
協調性の伝え方:人事に刺さる構成とポイント
「協調性があります」だけでは評価されません。どのような構成で、どうエピソードを組み立てればよいかを整理します。
自己PR構成のフレーム(協調性編)
① チームでの立場と状況を明確にする
例:「大学のゼミで、3人チームで研究発表を担当しました」
② 協調性を発揮した“対立”や“違い”の描写を入れる
例:「進め方の方針が合わず、メンバー同士の意見がぶつかっていました」
③ どんな役割を果たしたか、自発的な関与を示す
例:「私はそれぞれの主張を整理し、共通点を見出して一つの方針にまとめました」
④ 結果とチーム全体への効果
例:「メンバーから『話し合いやすくなった』という声があり、発表内容の完成度も上がりました」
⑤ 学びと今後の仕事への活かし方
例:「意見の違いはチームに必要な要素だと実感し、職場でも多様な考えを尊重しながら調整役を担いたいです」
このように、「ただ仲良くする」だけではなく、「違いを乗り越えて成果を出す」流れを意識することで、協調性が“社会人スキル”として伝わります。
よくあるNGパターンと改善ポイント
① 「衝突なし」の話は評価されにくい
→ 協調性の価値は“異なる意見”や“価値観のずれ”を扱ったときに発揮されます。
何も問題が起きなかったチーム話は、単なる平和エピソードに留まります。
② 「自分が譲りました」だけでは受け身に見える
→ 一方的に譲る話では、思考力や関係構築力が見えません。
「どう折り合いをつけたか」「なぜそう判断したか」が含まれている必要があります。
③ 「協力しました」だけの話は内容が薄い
→ 協力という言葉は便利ですが、どんな形で、どんな工夫をして協力したのかまで具体的に言語化する必要があります。
協調性を「行動の力」として表現する練習
文章で協調性を伝えるためには、以下の練習が有効です。
「チーム活動で困ったことは?」を自問し、そのときの動きを書き出す
「その場の雰囲気はどうだったか?」を具体的に描写する練習をする
「自分がいなかったら、どうなっていたか?」と客観視してみる
このような観点でエピソードを深掘りすることで、協調性の“中身”が見えてきます。ありきたりな表現から抜け出すには、行動の詳細と感情の動きを合わせて整理することが重要です。
「協調性」はチームで働く上での信頼感につながる
自己PRで協調性を効果的に伝えられると、「この人なら職場にいても安心できそうだ」と人事が感じます。これは、実績ではなく“働くイメージ”を持たせるという点で非常に重要です。
「課題を見抜いて、改善した経験」は面接官の記憶に残る
企業が評価する新卒の力の中でも、特に実務に直結しやすいのが「課題発見・改善力」です。これは「何か問題を見つけて、それをよりよくするために自ら動く力」であり、多くの企業が「この力がある人は入社後も伸びる」と評価します。
学生生活の中でも、実はこの力を発揮する場面は多く存在します。しかし、自分では“改善”と意識していないケースも多いため、見落とされやすい力でもあります。今回はこの力を自己PRで的確に伝える方法について、具体的な構成や実例とともに解説していきます。
課題発見・改善力が注目される理由
社会に出れば、改善すべき「不満」や「未完成」が日常になる
新卒で入社すると、多くの仕事は「決まりきった業務」ではなく、「まだ改善の余地がある業務」や「回りくどい非効率な運用」に出会います。そうした場面で、“言われたことをただこなす人”と、“問題に気づいて提案できる人”とでは、周囲の評価に雲泥の差が出ます。
人事がこの力を評価する背景には、「成長力」「問題解決力」「組織改善への貢献」が含まれており、総合的な“自立性”の指標ともなっているのです。
自己PR構成(課題発見・改善力編)
課題発見・改善力を伝えるには、以下の5ステップで論理的に構成するのが有効です。
① 状況説明と初期課題の発見
例:「飲食店のアルバイト先で、レジ前の混雑が頻繁に発生していました」
このように、日常的な“困りごと”や“違和感”を起点とすることで、身近な場面からスタートできます。
② 数字を使った課題の裏付け
例:「ピークタイムの待ち時間が平均7分以上、長い日は10分超の列ができていました」
定量的なデータが入ると、説得力が格段に上がります。アルバイトであっても、タイマーで計測した、日報で集計したなど、自分なりに取ったデータを活用すると評価が高まります。
③ 自らの行動と提案の内容
例:「レジ担当者が1人だったことに着目し、注文・会計を分離する動線を店長に提案。週末のみ2人体制を試行しました」
具体的な提案内容と行動のステップを明確に伝えます。「相談した」「巻き込んだ」などの行為もプラス評価の要素です。
④ 結果と数値の変化
例:「試行開始から3週間で、ピーク時の待ち時間が平均4分に短縮。顧客アンケートの満足度も2ポイント上昇しました」
このように“改善の成果”を数字で示すと、聞き手の印象に強く残ります。変化前→変化後が明確に比較できるとベストです。
⑤ 学びと仕事への展開
例:「課題を見つけるには“現場をよく観察する力”が必要だと実感しました。社会人としても、仕組みの中に埋もれている非効率を自分から見抜き、改善を提案していきたいです」
エピソードを通じて得た気づきを、仕事への意欲につなげることで、成長意欲や志望度の高さをアピールできます。
よくあるNGと改善例
「課題が見つかっただけ」で終わっている
ただ「こういう問題があった」だけで終わると、改善力は伝わりません。課題発見と行動のセットがあってこそ意味を持ちます。
→「問題に対して何をどうしたのか?」を必ず盛り込む。
「改善の効果が不明確」
「工夫したけど、何がどう良くなったかが曖昧」というケースも多く見られます。
→「具体的な変化」「他者の反応」「数値での改善」などを一つは含める。
「思いつきでやった感が出てしまう」
しっかりと考察して行動したことを示すことで、信頼感が増します。
→「背景にある原因を考えた」「仮説を立てた」などのプロセスを盛り込むと◎。
「自分で気づき、変える力」は即戦力への第一歩
改善力は、自主性・観察力・提案力・説得力・実行力・検証力といったさまざまな力の集合体です。この力をアピールできる自己PRは、人事に「この人は現場で伸びそう」「考えて行動できる人」と認識され、最初の内定獲得に非常に近づきます。
「自己成長意欲」をどう見せるかで印象が大きく変わる
最初の内定を手にする学生の多くに共通しているのは、「この人は入社後に伸びそうだ」と思わせる“余白”を持っていることです。これは、経験の多さではなく、「学びに対してどれだけ前向きに行動しているか」によって生まれます。
そのため、自己PRにおいて“自己成長意欲”を正しく伝えることは、実は内定獲得において非常に重要なポイントです。たとえ実績が乏しくても、「この人は今後どんどん吸収して変化していく」という印象を与えることができれば、評価は大きく上がります。
成長意欲は「未来の行動」を想起させる材料
成果ではなく、“伸びしろ”が見られている
学生の自己PRを見ていると、「過去の話」ばかりで終わってしまっているものが多く見られます。しかし、企業の人事が知りたいのは「この人を採用したら、どのように成長し、どんな活躍をしてくれるか」という“未来の姿”です。
その未来像をリアルにイメージさせるのが、「自己成長意欲」のパートです。言い換えれば、「これからどう行動していくか」を語ることで、相手の頭の中に“働くあなたの姿”を浮かばせることができます。
自己成長意欲を効果的に伝える構成
以下の5つの構成要素を意識すると、自己PRの中に成長意欲を自然に組み込むことができます。
① きっかけとなる経験や出会い
例:「ゼミで初めて社会人ゲストとディスカッションした際、自分の視野の狭さに気づきました」
H4 ② 足りなかったものへの気づき
例:「論点の整理や背景知識の深さがまったく足りないと痛感し、自分の甘さを思い知りました」
③ その後に起こした行動
例:「以後、毎週ビジネス誌を読む習慣をつけ、要約と自分の視点をSNSで発信し続けました」
④ 成長の実感
例:「半年でフォロワーが400人を超え、ゼミ内でも他人の意見を受けて発展的な議論ができるようになりました」
⑤ 今後の成長目標
例:「社会人になってからも、学びを止めず、分からないことを放置せずに一つ一つ吸収していく姿勢を貫きたいです」
このように、きっかけ→気づき→行動→変化→未来というストーリー構造にすると、読み手は「この人なら入社後も前向きに吸収してくれるだろう」と自然に思うようになります。
成長意欲を語る際に避けたいNG例
①「学びが好きです」と言うだけで終わる
→「学ぶ姿勢がある」と言っても、それを裏付ける行動がなければ説得力はありません。
改善策:実際に“何を・どのように・どれくらい”学んできたのかを数字や頻度で示す。
②「将来の夢」は語るが、現在の行動がない
→「将来こうなりたい」と言うだけでは評価されません。そこに向けた“今の努力”があって初めて本気度が伝わります。
改善策:「今やっていること」「すでに習慣化していること」を具体的に書く。
③「反省」で終わるだけのエピソード
→「自分はできなかった」「悔しかった」とだけ語って終わると、成長意欲ではなく“後悔”で終わってしまいます。
改善策:「できなかった → 気づいた → 行動した →変わった」の流れを必ずつなげる。
最初の内定に必要なのは、“能力”よりも“伸びる姿勢”
これまでにわたって、人事に受けのいい自己PRのための力と伝え方を解説してきましたが、最も伝えたいのは、「すごい経験で勝負する必要はない」ということです。むしろ、「この人はこれからもっと成長していく」「仲間として働いてみたい」と思わせることのほうが、新卒採用ではずっと重要なのです。
【4つの力を振り返る】人事に響く自己PRの構成要素
主体性:自ら考え、動く力。どんな場面でも“自分の意思”で行動できたことを示す。
協調性:違う意見をつなぎ、チームで成果を出せる力。受け身ではなく“関係を動かす力”を見せる。
課題発見・改善力:現状を疑い、よりよくする行動を起こせる力。数字で改善結果を示すと効果大。
自己成長意欲:気づきを学びに変え、自ら進化できる姿勢。現在の行動と未来の意欲を両立して語る。
これらの力はすべて、特別な経験がなくても、日常の中で培ってきたもので十分です。大切なのは、それをどれだけ“構造的に・論理的に”伝えられるか。そして、“自分らしさ”を消さずに表現できるかです。
「人事に伝わる自己PR」が、最初の内定を引き寄せる
最初の内定を得るために大切なのは、「一番になれる経験を探すこと」ではなく、「ありふれた経験から、自分の力をわかりやすく見せること」です。伝える力を磨けば、どんな人にも魅力はあります。
採用担当者は“完璧な新卒”を求めているわけではありません。「この人と働いてみたい」「素直で成長しそう」と思える人を選びます。だからこそ、自己PRでは、過去の実績だけでなく、“今の姿勢”と“これからの変化”を丁寧に伝えることが、何より大切なのです。
この構成をベースに、あなた自身のエピソードと視点を組み込んでいけば、最初の内定にグッと近づくはずです。