読まれるESと読まれないES、その差はどこにあるのか?

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読まれるESと読まれないES、その差はどこにあるのか?


通過率に大きな差が出る“最初の印象”


就職活動の書類選考において、ES(エントリーシート)は履歴書と並ぶ最初の関門です。にもかかわらず、多くの学生がESを「とにかく頑張ったことを書けばいい」「テンプレート通りでいい」と考え、書き上げたものをそのまま提出してしまいます。

しかし、現実の選考現場では、1人の採用担当者が1日に何十通ものESを読むことも珍しくありません。つまり、読み手の関心を引けなければ“読まれたことすらないまま”落とされるのです。

ESにおいて必要なのは、「自分が頑張ったことを書く」ことではなく、「読み手が知りたいことを、読みやすく伝える」こと。その違いが、最初の内定をつかむための分岐点になります。

採用担当者は「何を」「どう」見ているのか?


学生にとってESは人生を左右する大事な1枚でも、採用担当者にとっては数ある選考資料の1つに過ぎません。限られた時間の中で、彼らは何を見ているのか。それを知らなければ、相手の基準に合わない内容で落とされるのは当然の結果です。

採用担当者の視点は、概ね以下の3点に集約されます。

企業にマッチするか(カルチャーフィット)

成果を出す力があるか(ポテンシャル)

論理的な思考と表現力があるか

これらの要素が読み取れなければ、どれだけ頑張ったエピソードでも評価されません。つまり、自分のアピールポイントを、採用者の関心軸に翻訳して伝える力が問われるのです。

読み飛ばされないESは“冒頭設計”に差がある


第一印象を決める「出だしの1〜2行」


ESの通過率に最も影響するのは、実は「出だしの数行」です。採用担当者が一目見て、「お、この学生は読みやすそうだ」と感じれば、自然と最後まで目を通されます。

逆に、文頭から回りくどい言い回しや抽象的な言葉が並ぶと、「結論が見えない」「何が言いたいのか分からない」と判断され、数行読まれて終わりです。

したがって、ESでは冒頭の1〜2行で結論を提示するのが鉄則です。たとえば自己PRであれば、

「私の強みは、複数の立場の意見をまとめ、合意形成する力です。」

というように、何を伝えるかを明確に宣言することで、読み手は安心して本文に入ることができます。

採用担当者の“視線の動き”を設計に取り入れる


読み手の視線は、左上から右下に斜めに動きます。そしてESのように縦に長い文章では、「太字や段落の切り方」「文頭の語彙選び」が視線の動きに影響します。

この特性を踏まえると、ESは以下のような構成が望ましいといえます。

冒頭で結論を提示(=関心を引く)

見出し代わりの文頭で各段落の要点を示す

読点の打ち方や文の長さに緩急をつける

読みやすさの工夫は、内容以上に読み手の印象を左右します。特に大手企業や人気企業では、「読みやすい=気が利く学生」と評価されるケースも少なくありません。

読みやすさを生む“設計”という考え方


文章の前に「設計図」を書くことの重要性


多くの学生が、いきなりESの本文を書き始めてしまいます。しかしそれでは、話の流れが整理されず、書いているうちに主張がぶれることも珍しくありません。

そこで必要なのが、ESの設計図(構成メモ)を事前に作るという習慣です。書き出す前に、以下のような項目を整理しておくだけで、文章の質とスピードは大きく向上します。

結論(主張したい強みや志望動機)

エピソード(その根拠になる経験)

具体的な行動(どのように取り組んだか)

結果(何が得られたか)

学び(再現性や応用可能性)

このように設計してから書き始めることで、ES全体の構造に一貫性が生まれ、読み手にとっても理解しやすいものになります。

「何を伝えるか」ではなく「何が伝わるか」


ESを書くとき、多くの学生が「自分が伝えたいこと」にばかり意識を向けています。しかし、重要なのは「相手にどう伝わるか」です。

たとえば「リーダーシップがあります」と言っても、根拠が乏しければ信用されませんし、「協調性に自信があります」と書いていても、行動や結果が伴っていなければ説得力に欠けます。

つまりESは、伝えたいことを押し付ける場ではなく、読み手の納得感を設計する場なのです。

通過率を左右するのは「設計+読み手視点」


ESで差が出るのは、「何を書いたか」よりも、「どんな順序で、どんな視点で書いたか」です。伝えたいことを整理し、それを相手にとって理解しやすい構成に変換する。これができる学生が、最初の内定に一歩近づきます。

「内容勝負」の前に、「読み手目線の設計」を意識すること。それが、読み飛ばされないES、通過するESの出発点です。

自己PRは“行動”で語り、再現性を持たせる


企業が本当に知りたいのは「性格」ではない


自己PRを「私は○○な性格です」といった性格診断的な内容でまとめてしまう人は少なくありません。しかし企業が自己PRで見ているのは、単なる性格ではなく、「仕事で活かせる資質」と「再現性のある行動力」です。

たとえば「協調性があります」と言う場合、それがどのような場面で、どのような行動を通して発揮されたのか。さらに、その行動が社会人になっても繰り返し発揮できることが読み取れなければ意味がありません。

自己PRを構成する4つの軸


評価される自己PRには、以下の4つの要素が必ず含まれています。

強みの明確化(最初に提示)
 →読み手が一瞬で理解できるように、冒頭で一言にまとめること。

具体的なエピソード(背景の説明)
 →その強みを活かした経験が1つに絞られているか。

行動と工夫(どう考え、どう動いたか)
 →困難や工夫のプロセスを描くことで、思考の質が伝わる。

成果と学び(再現性)
 →今後も活かせるスキルや考え方として整理できているか。

この4つを意識して書くと、自然と内容に筋が通り、読み手も評価のポイントを見つけやすくなります。

志望動機は「感情」ではなく「戦略」で組み立てる


共感だけでは通過しない


多くの学生が陥りがちなのが、「説明会での印象」や「企業理念への共感」だけで構成された志望動機です。共感は悪くありませんが、それはあくまで補助的な要素。採用担当者が求めているのは、論理的な接続と適性の根拠です。

つまり、以下の2つの視点が明確でなければ、志望動機としては成立しません。

自分のキャリア観と企業の方向性が一致していること

自分の能力・経験がその企業で活かせること

感情ではなく、理論と情報に基づいた構成が求められます。

「選んだ理由」と「選ばれる理由」の両方を語る


強い志望動機とは、「この会社に入りたい理由」だけでなく、「この会社が自分を選ぶ理由」も含まれているものです。

このため、志望動機を考える際には、以下のような構造でまとめていくのが効果的です。

キャリアビジョンの提示
 →自分がどんな社会人になりたいか(将来像)

企業との接点
 →企業の事業内容・方針・環境と、自分の志向の一致

自分の適性と貢献イメージ
 →過去の経験やスキルがどう活かせるか

この企業である必然性
 →なぜ同業他社ではなくこの企業なのか

こうした構成を守ることで、「なんとなく興味があります」ではない、説得力ある志望動機に変わります。

よくあるNGパターンと改善方法


自己PRでのNG例:話が散らかっている


自己PRの失敗で多いのは、「アピールしたいことが多すぎて一貫性がない」パターンです。強みを2つも3つも入れたり、複数のエピソードを詰め込んで、結果的に何が言いたいのか分からなくなってしまうのです。

改善策:伝える強みは1つに絞り、それを深掘りする。

情報量よりも、読み手が納得できる“筋の通った話”を優先するべきです。

志望動機でのNG例:企業情報の丸写し


「説明会で〜とおっしゃっていたことに共感しました」「貴社は成長中の業界において〇〇な事業を展開しており〜」など、企業HPや説明会で得た情報をそのまま使っている文章も非常に多いです。

改善策:企業情報を“自分ごと”に落とし込む。

たとえば、

「私は〜という志向を持っており、貴社の〜という取り組みに強く惹かれました」

「これまでの〜という経験を、貴社の〇〇事業で活かしたいと考えています」

といった具合に、企業情報と自分の経験や価値観を接続させることが重要です。

「伝える」ではなく「伝わる」を軸に考える


ESにおいて、「伝えたいことを並べた」だけの文章は、評価されません。大事なのは、読み手の目線で「どう伝わるか」を設計することです。

読みやすさ(構成・文量・言葉選び)

納得感(根拠となるエピソード)

再現性(仕事でも発揮できる行動原理)

この3つを意識することで、あなたのESは他の応募者と明確な差をつけられるようになります。評価されるESは、内容が“すごい”のではなく、“伝え方が優れている”のです。文章力ではなく、設計力の勝負。その意識が、書類選考の突破率を大きく変えていきます。


「何をやったか」ではなく「どう考えて動いたか」が評価される

事実の羅列では評価されない理由


ESで自分の経験を書く際、多くの学生がやってしまうのが「出来事の説明」だけに終始してしまうことです。たとえば、「サークルで代表を務めました」「バイトで新人教育を任されました」という事実だけを書いてしまうと、「それで?」と読み手に思われてしまいます。

採用担当者は、肩書きや役割そのものに価値を感じているわけではありません。むしろ、「その役割を通じて、どんな問題意識を持ち、どう考え、どんな行動をとったか」、そして「その経験を通して何を得て、どう活かせるか」を知りたいのです。

経験を評価に変える“深掘りの思考法”


エピソードを通して評価されるには、以下のような深掘りが必要です。

なぜその行動を選んだのか?

他にどんな選択肢があったのか?

どのような障害や葛藤があったのか?

結果に対してどう振り返ったか?

これらの要素を盛り込むことで、読み手は「この人はただ頑張ったのではなく、自分の頭で考えながら動いた」と認識しやすくなります。

ESの言語化力が“自分の思考”を映し出す


良いESは語彙が豊か、ではなく“言葉の選び方”が正確


ESの言語表現に不安を感じ、「難しい言葉を使おう」「語彙力を増やそう」と努力する学生もいますが、これは本質的ではありません。評価されるのは難しい言葉ではなく、“ズレのない言葉選び”です。

たとえば、「主体性」と「責任感」、「リーダーシップ」と「巻き込み力」は似て非なるものです。自分が表現したい価値を、最も的確に表す言葉を選ぶ力=言語化力が問われます。

思考を言葉に変換する練習


言語化力を高めるためには、自分の思考を正確に言葉にする練習が必要です。以下のような手法が有効です。

抽象⇔具体を意識して書き直す

「責任感があります」→「誰もやりたがらない仕事でも、最後までやりきる姿勢を持ち続けました」

主語・目的語・動詞を明確にする

「工夫しました」→「〜という課題に対して、〜の方法を考え、〜を実行しました」

感情だけで終わらせない

「嬉しかった」→「〜の成果が出たことで、これまでの試行錯誤が報われたと実感しました」

文章のクオリティは、思考の解像度に比例します。曖昧な経験しか書けない人は、表現が曖昧になり、読み手に伝わりません。ESは思考を伝えるツールであり、書く行為そのものが思考力を磨く訓練でもあるのです。

他人と差がつくESは「読み手の想像力」を引き出す


経験の「風景」が浮かぶように書く


良いESには、「情景が浮かぶリアリティ」があります。たとえば、

「文化祭の実行委員として1万人規模のイベントをまとめた」
よりも

「200人規模のチームで、装飾班の責任者として3か月間、業者との交渉や予算管理を行った」

の方が、読み手にとっては具体的で納得感があります。数字・役割・期間・行動内容などを明示することは、読み手の想像力を助ける重要な要素です。

「視点の切り替え」で読ませる力を高める


他の学生と差をつけるために効果的なのが、「視点を切り替えて書く」ことです。

自分の視点(内省):どんな気持ちで取り組んだか、どんな考えを持って行動したか

他者の視点(客観):周囲からどう見られていたか、どんな影響を与えたか

これを交互に入れることで、“自己満足の文章”から“納得感のある文章”へと変わります。読み手が「この人と一緒に働くとどうなるか」を想像できるようになるため、選考通過の確率も高まります。

差がつくESは「情報整理」と「構成設計」が違う

読みやすさは“構成の型”で決まる


どれだけ良い経験を持っていても、それが整理されていなければ読み手には伝わりません。多くのESは情報過多や論理の飛躍で、読み手に“読みにくさ”を感じさせてしまいます。

そのため、情報は先に整理し、構成は「一貫性」と「意図」に基づいて設計する必要があるのです。おすすめは以下のようなテンプレートです。

主張(強み・動機)

背景(なぜそれが大事だと思うようになったか)

行動(どんな工夫や判断をしたか)

結果(何が得られたか、どう変化したか)

再現性(それをどう活かせるか)

この流れを守るだけでも、読み手にとって格段に理解しやすいESになります。

文章力ではなく“構成力”が通過率を分ける


ESで最も差がつくのは、経験の質ではありません。自分の経験を「誰が読んでもわかる形」に落とし込めているかどうかです。これは文章力ではなく、情報の編集力や構成力の問題です。

誰でも努力した経験は持っています。その中から伝えるべきことを選び、伝わる形に整理し、読み手の目線で設計する。その力こそが、他人と差をつける最大の要素です。

通過するESは、「上手に書かれたES」ではなく、「わかりやすく整理されたES」である。この視点を持つことが、最初の内定への道を切り拓く近道になります。


ESは提出して終わりではない


提出後の使い回しを前提に設計する


ESを書き終えて提出すると、一区切りがついた気になりますが、実はここからが重要です。なぜなら、多くの企業は似たような設問を出しており、ESは「1社のために書くもの」から「複数社に展開できるベース」に進化させることができる」からです。

たとえば、自己PRや学生時代に頑張ったこと(いわゆる“ガクチカ”)は、形を整えておけばさまざまな企業にアレンジして使い回せます。企業ごとの特色に応じて表現を変えることで、効率的に選考を進めることが可能です。

「1本目のES」をベースに何度も再設計する


1社目のESは、「たたき台」としての役割も果たします。書き終わったESを以下の観点から振り返り、次に生かすことで質は大きく向上します。

読み手にとってわかりやすい構成だったか?

強みや志望理由に一貫性はあったか?

自分の経験が、その企業のニーズと結びついていたか?

提出したESを“終わったもの”にせず、「改善すべきプロトタイプ」として見直す意識が、内定への確率を大きく高めるポイントです。

ファクトチェックと「ESの仕上げ方」


誤字脱字・曖昧表現を徹底排除する


最後の仕上げで気を抜くと、通るはずのESも通らなくなります。誤字・脱字があれば当然印象は下がりますし、「たぶん」「おそらく」といった曖昧な表現は自信のなさを感じさせます。

仕上げ前の確認ポイント:

一文一文が長すぎないか(60文字以内が目安)

主語と述語のねじれがないか

同じ言葉の繰り返しがないか

時系列が混在していないか

読み手に“読み直し”をさせない文章が理想です。

他人の目を通すことで質は数段上がる


ESは一人で書いていると、どうしても主観的になりがちです。内容が伝わっていると思っても、第三者が読めば「意味が分からない」「伝わっていない」と感じることは少なくありません。

可能であれば、他人に読んでもらう工程を必ず挟むべきです。

大学のキャリアセンター

就活エージェント

OB・OG

友人(就活を経験した人)

どんな視点からのフィードバックでも、自分一人では気づけない改善点が見つかる可能性があります。

面接対策のための「ES活用術」


ESと面接は“別物”ではなく“連動している”


ESは選考のスタート地点です。多くの学生が誤解しているのが、「ESと面接は別々に対策すればいい」という考え方です。しかし、実際の選考ではESの内容がそのまま面接の質問材料になります。

よって、ESを作成する段階から、「この内容を面接で深掘りされたらどう答えるか?」を想定しておく必要があります。逆に言えば、ESの構成をうまく設計すれば、面接の流れも自分にとって有利に導くことができるのです。

ESをベースに面接回答集を作っておく


提出したESをベースに、よく聞かれそうな質問を先に書き出しておきましょう。

なぜその強みが身についたのか?

その経験で一番苦労したことは?

自分の行動が周囲に与えた影響は?

その企業を選んだ理由は何か?

これらを事前に文字にして整理しておけば、面接直前で慌てることなく、軸のある受け答えができるようになります。

一貫性が内定を引き寄せる


自己PR・志望動機・ガクチカの軸を統一する


ESにおいて最も評価されるのは、一貫性のあるストーリー設計です。

自己PRで述べた強み

学生時代に頑張った経験(ガクチカ)

志望動機で語る活かしたい力

これらが矛盾せず一貫してつながっている場合、採用担当者は「この学生は自分をよく理解していて、うちでも活躍してくれそうだ」と判断します。

逆に、ESごとに異なる強みやキャラ設定になっていたり、自己PRと志望動機が噛み合っていなかったりすると、「この学生はブレている」「どこに就職しても同じようなことを書くタイプだな」と捉えられやすくなります。

まとめ:ESは思考のプロセスが見える“自己開示書”


エントリーシートは、ただの自己紹介ツールではありません。それは、「私はこういう価値観を持ち、こういう行動をとり、今後こういう風に働きたいと思っています」という思考プロセスを相手に伝える文書です。

そのためには、表面的な経験の列挙ではなく、経験のなかの思考・判断・行動・成長を丁寧に描く必要があります。さらに、志望企業の求める人物像と自分の資質の接点を意識して表現することで、ESは単なる自己PRを超えて「納得感のある候補者像」を形成することができます。

ESは就活の起点であり、選考の方向性を決定づける“設計図”です。完成度の高いESは、面接でも話の軸となり、自信を持って自分を語れる武器になります。焦らず、丁寧に、戦略的に構築していくことが、最初の内定獲得への確かな一歩になります。

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