通過するESには“視点の深さ”がある

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通過するESには“視点の深さ”がある


企業がESで見ているのは「視点と思考の深さ」


多くの学生が「エピソードの派手さ」や「成果の大きさ」で自己PRを構成しようとします。しかし、実際の選考現場では、目を引く実績よりも、どのように物事を見て、どう考え、どう動いたかという「視点と思考の深さ」に注目が集まります。

なぜなら、入社後に必要な力とは、前例のない状況や曖昧な課題に向き合う“思考の柔軟性”であり、それは学生時代の体験に表れる視点や行動選択から推察されるためです。つまり、ESは「あなたがどういう視点を持って動く人間か」を伝える場だということを意識しなければなりません。

表面的な自己PRが採用されない理由


たとえば、「アルバイトで売上No.1を獲得しました」「部活でキャプテンを務めました」という実績は、それだけで読んでも何の判断材料にもなりません。それは、「結果」は過去のものであり、「その人の将来の働きぶりを保証しない」からです。

むしろ企業が知りたいのは、その過程において何を見て、どう考え、どんな判断をし、何を選び、どのように行動したのかというプロセスです。この部分が書かれていないESは、どれだけ成果があっても薄っぺらく見えてしまい、印象に残りません。

視点を深めるために必要なのは「問い直し」


では、視点と思考の深さをどうやってESに落とし込めばいいのでしょうか。答えは、「自分に問いを立てること」です。

例として、自己PRを「リーダーシップ」と決めたとします。そこから以下のように問いを掘り下げていくことで、内容の深さが生まれます。

なぜ自分はリーダーを務めることになったのか?

メンバーとの関係で何が一番難しかったのか?

その困難にどう向き合い、何を選び、どう伝えたのか?

もしやり直せるとしたら何を変えるか?

このような問いを立てて言語化していくことで、「自分なりの考え方や価値観」がにじみ出るESが完成していきます。

差がつくESは“構造”にも秘密がある


「問い→行動→結果→学び」の順番で伝える


企業の採用担当者は、1日に何百枚ものESを読むこともあります。限られた時間で読む以上、論理的な構造を持った文章であるかどうかは、印象を左右する大きな要素です。

もっとも基本的で汎用性が高い構造は以下の4つの流れです。

問い・課題意識:その場面で自分が直面した問題、または意識した目標

行動:何を見てどう判断し、どのように行動したか

結果:その行動の結果、どのような成果や反応があったか

学び:その経験を通じて得たものと、それを今後どう活かすか

この構造を守るだけでも、読み手は「この人は筋の通った思考ができるな」と感じやすくなります。

文章の“見た目”も評価対象になっている


視点と思考の深さを盛り込むことは大切ですが、内容がいくら良くても「読みにくい」文章では伝わりません。

以下のような形式面も、採用担当者にとっては重要な評価ポイントです。

文量のバランス:最初だけ長く、最後が一言で終わってしまう構成はNG

段落の使い方:1段落で1トピック、改行で読みやすさを出す

主語と述語の対応:日本語のミスに気づかないと、雑な印象を与える

同じ言葉の繰り返し:語彙が少ない印象にならないよう、言い換えを意識する

特にWEBエントリーの場合、画面で読むことを前提としたレイアウト(句読点・改行・言い換え)が大きな差につながります。

“自分で読んで納得できるか”が最初の審査


書き終えたらまずすべきことは、「自分のESを声に出して読む」ことです。読むことで、言葉のつながりの不自然さや、論理の飛躍、リズムの悪さなどに自分で気づけます。

納得感を持てる文章は、読み手にも安心感を与えます。「自分で読んで気持ちよく読めるかどうか」は、ES完成の最低条件といってもいいでしょう。

「何を書くか」に迷ったときの素材発掘法


多くの学生が“ES素材”を誤解している


エントリーシートで書くべき内容が浮かばず、手が止まってしまう学生は多くいます。その理由のひとつが、「特別な経験がないといけない」と思い込んでいることです。

実際には、企業が求めているのは「派手な実績」ではなく、「その人がどう考え、行動したかがわかる具体的なエピソード」です。つまり、日常の中の小さな体験でも、伝え方しだいで十分に自己PRやガクチカの素材になり得るのです。

素材の見つけ方:「行動」と「変化」に注目せよ


自己PRや学生時代に力を入れたことを探す際は、まず自分の過去の体験を振り返る必要があります。このとき意識すべきは「行動」と「変化」です。

以下のような視点で棚卸しをしていくと、自分の経験が自然と素材化されていきます。

何に本気になったか?(感情が動いた経験)

その中でどんな問題に直面したか?

その状況で、自分はどう行動を変えたか?

結果として周囲や自分にどんな変化が起きたか?

ここでのポイントは、最初から完成された成果を探す必要はないということです。「うまくいかなかったけれど、自分なりに工夫した」「チームが変わるきっかけをつくった」など、変化を生み出した小さな行動にこそ、自分らしさが出ます。

「どのエピソードを選ぶべきか」の判断基準


素材をいくつか見つけられたら、次は「どれをESに使うか?」という選定フェーズに入ります。このときに迷わないための判断基準は、以下の3つです。

1. 再現性があるか(自分の特性が表れているか)


そのエピソードが「たまたまの出来事」ではなく、自分の思考パターンや行動のクセ、価値観に基づいていたかを確認します。再現性があるエピソードは、「入社後も同じように活躍してくれそうだ」と感じさせます。

2. 役割が明確か(自分の貢献が伝わるか)


チームでの経験を書く場合、自分がどんな役割を担い、何を決断し、どう動いたのかが明確である必要があります。「協力した」だけでは伝わらず、自分の思考と判断が伝わる内容であるかをチェックしましょう。

3. 変化を生んだか(現状を動かしたか)


成功体験であっても、ただうまくいった話では意味がありません。むしろ、何かを変えた・変わったという構造があるかどうかが重要です。企業は変化を起こせる人材を求めています。

他人と差がつく“素材の使い方”


エピソードを「話の種」ではなく「自分の証明」にする


多くの学生は、エピソードを“紹介文”のように使ってしまいます。たとえば「アルバイトでリーダーを経験しました」とだけ述べて終わってしまうのはNGです。

本当に伝えるべきは、「自分とはこういう人間である」という軸です。その軸を支える証拠としてエピソードを配置するのが正解です。つまり、「リーダーを任されるような責任感がある」「周囲の状況を見て動ける人間だ」といった抽象的な特徴を、具体的な行動で証明するのが素材の使い方です。

同じエピソードでも「伝わり方」は変えられる


素材を選んだあとに重要なのが、“どの切り口で語るか”です。たとえば、同じサークル活動のエピソードでも、「リーダーシップ」「協調性」「課題解決力」など、伝える力によって内容の構成が変わってきます。

ここでのコツは、「企業が欲している力」に合わせて、切り口を変えることです。ESにおいては、自分の持っている力を企業に合わせて“見せ方”を最適化することが求められます。

自己PRとガクチカは“使い分け”ではなく“補完”で考える


自己PRとガクチカを完全に分けて考えるのではなく、互いに補い合う関係にあると捉えるとESの設計がしやすくなります。

自己PRで「こういう人間です」と提示し

ガクチカで「そうであることを示す行動の一例」を語る

このように設計することで、企業側も「この学生は一貫した軸を持っている」と認識しやすくなります。ES全体の印象にも深みが出て、面接につながりやすくなります。


伝わるESに仕上げるための言語化テクニック


書くべき情報を「順番」にこだわって整理する


ESで重要なのは、「良いことを書く」ことではなく、「相手が理解しやすいように書く」ことです。そのためには、伝える順番が極めて重要です。

自己PRやガクチカでは、以下のような構成をベースにしましょう。

結論(自分の強み)

具体的エピソードの導入(背景)

課題や困難に対するアクション(行動)

結果や評価、成果

学びや再現性、仕事への活かし方

この順番は、読み手の理解を助け、話の筋道を明確にします。特に、最初に「私は◯◯力に自信があります」と結論から始めることで、ES全体の読みやすさが格段に上がります。

「事実」を「意味」に変換することで深みが生まれる


多くの学生が陥るミスのひとつは、「何をしたか」だけで完結させてしまうことです。しかし、企業が知りたいのは、「なぜそうしたのか」「そこから何を学んだのか」といった意味づけの部分です。

たとえば、

「サークルの幹事を担当し、100人規模の合宿を運営しました」

という事実を、

「全体最適を重視しながら、調整力を活かしてメンバーの満足度と安全性を両立しました」

と意味づけすると、あなたという人物像が一段深く伝わります。

事実→背景→行動→意味づけ→学び、という思考の流れを意識すると、内容に厚みが出て評価されやすくなります。

「抽象と具体」を行き来する文章が印象に残る


文章に説得力を持たせるには、抽象的な言葉(強みや価値観)と、具体的な行動(エピソード)を往復する構成が効果的です。

たとえば、

抽象:私は常に「全体視点」を持って物事に取り組むよう心がけています。

具体:所属するサークルでは、代表として全体の連携に課題があると感じ、他部署とのMTGを設け、情報共有の仕組みを整備しました。

このように、抽象(価値観)を提示し、具体(行動)で支える形にすると、読んだ人に印象が残ります。逆に、抽象だけ、具体だけでは説得力に欠けるため、両者をバランスよく組み合わせることが大切です。

誤解されないESを書くための注意点

「主観」と「客観」のバランスに注意する


ESでは、自分の思いや努力を伝える一方で、客観性も必要です。たとえば、

NG例:とても大変だったが、自分なりにはよく頑張ったと思う

OK例:当初の来客数は前年比70%だったが、施策後に85%まで回復した

「自分がどう感じたか」だけではなく、「どのような状況にどう影響を与えたか」を数字や事実で補足すると、説得力が増します。

文末表現・接続語を整えるだけで読みやすさが上がる


同じ内容でも、文末表現や接続語が適切に使われているかどうかで、読み手の印象は大きく変わります。

悪い例:「〜しました。そして〜しました。さらに〜しました。」

良い例:「〜を行いました。次に、その成果を活かし〜を試みました。」

また、文末が「〜と思います」や「〜と感じました」で統一されていると、頼りない印象になりがちです。「〜を実行しました」「〜を意識しました」など、行動を表す動詞で締めると、内容に力強さが出ます。

「長すぎる一文」は読み飛ばされる


1文が40〜50字を超えると、視線が止まりにくく、読み手が疲れます。ESでは、1文は30字程度を目安に、こまめに句読点を打つことがポイントです。

また、「主語と述語が離れている」「接続詞が曖昧」な文章は、途中で意味がわからなくなる原因になります。書き終えたら声に出して読み、「息継ぎできる長さかどうか」をチェックするのも効果的です。

「らしさ」を出すには“言い換え”の技術が必要


同じ言葉でも印象は変えられる


「協調性がある」「粘り強い」「積極的」などの表現は、ESにおいて使い古されています。これらを別の角度から言い換えることで、文章全体が一気に差別化されます。

協調性 → 「状況に応じて立場を調整し、相手の意見を引き出す力」

粘り強さ → 「達成条件が明確でなくても、継続的に工夫を重ねられる姿勢」

このように、自分の強みを“別の視点で捉え直す”ことで、他者と被らない文章が完成します。

面接につながるESの最終仕上げと伝達力の強化


読まれる前提で書く「伝える技術」


ESは提出して終わりではない。その内容は面接で繰り返し参照され、話題にされる。だからこそ、文章として伝わることに加えて、話して伝えられる内容に仕上げておく必要がある。
書いた内容を口に出して読み直すと、論理の飛躍や不自然な表現が可視化される。さらに、同じ話を面接で伝える場面を想像しながら、「面接官が質問したくなるような余白」をあえて残しておくと、次の選考にもつながりやすくなる。

文章の完成度を上げるのと同時に、「相手の記憶に残るESか」という視点も意識する。面接官は一日に何十人ものESを読む。だからこそ、印象に残る一文や、「この人に会ってみたい」と思わせる熱量が含まれているかが鍵になる。

読み手視点で仕上げる最終チェックポイント


仕上げ段階では、自己満足で完結しないことが重要になる。自分の意図がそのまま伝わるとは限らず、誤読や誤解の余地をつぶすことが求められる。以下の3点を確認すると、仕上がりの精度が上がる。

1. 内容に一貫性があるか


自己PR、ガクチカ、志望動機のそれぞれが、バラバラの価値観を示していないか。例えば、協調性を強調した自己PRのあとに、志望動機で「個人主義的な環境を求めている」と書けば、読み手は矛盾を感じる。
ES全体でひとつの人物像が浮かび上がるように、強みの軸・行動傾向・価値観の整合性をチェックする。

2. 読みやすい構成になっているか


文が長すぎたり、接続語が連発されていたりしないか。1文1意を意識し、適度に改行しながらリズムを整えることで、読みにくさは軽減される。内容が正しくても読みにくければ印象が悪くなるため、読み手の心理的負荷を最小化する工夫は不可欠だ。

3. 誤解される表現や曖昧さが残っていないか


自分にとって自然な表現も、第三者から見れば曖昧に感じられることがある。「大変だった」「頑張った」など抽象的な表現がないか、「何がどう大変だったのか」「何をどう頑張ったのか」といった具体性を確認する。客観的に読み直す力が問われる。

面接で語れるかどうかが最終基準


ESに書いた内容を、面接で自信をもって語れるかどうか。これは、書き終えた後の最後の試金石だ。文章として美しくても、自分の言葉で再現できなければ意味がない。

そのためには、書き終えた後に「声に出して練習する」ことが効果的だ。誰かに話してみる、録音して聴いてみる、話しながら言葉に詰まる部分を修正する。それを繰り返すことで、書いた内容を“自分の武器”として扱える状態に持っていける。

また、内容の一部を「面接で使うことを想定してあえて詳しく書かない」という方法もある。たとえば、「新歓活動のリーダーを務め…」で止めておき、面接で詳細を語る場面を設計しておく。ESは面接の布石だと捉えれば、話す余地を残すことも戦略の一つになる。

企業との接続を意識した一文が差を生む


優れたESは、個人の強みや経験だけでなく、それが企業の理念や方針とどう結びつくかまでが書かれている。
たとえば、「チームで動く経験から得た調整力を、貴社の○○部署で活かし、複数部署間の橋渡しとして機能したい」といった表現は、読んだ人に具体的な活躍シーンを想起させやすい。

単に「チームで頑張りました」というだけでなく、「それが貴社の文化や課題解決とどうリンクするか」まで踏み込んだ文章は、ESの通過率を確実に引き上げる。

企業研究を深め、自分の強みを相手の言語に変換できるようになると、ただのエピソードが「企業にとって価値ある資質」に変わる。これはまさに、ESの本質的な目的である。

まとめ:内定につながるESの本質


エントリーシートは単なる応募書類ではなく、「あなたという人物を他人の目を通して認識させるための媒体」であり、選考の中で最も本質的な自己プレゼンテーションだ。

表面的なテクニックや型に頼るのではなく、自分自身の行動や思考の背景に正面から向き合い、それを読み手が理解しやすい構造と表現で伝える力が問われる。そして、ただ伝えるだけではなく、「だからこそこの会社に合っている」という接続点を示すことが、最初の内定を引き寄せる鍵になる。

経験の有無や実績の大小に関係なく、どれだけ言葉に真実味があるか、どれだけ読んだ人の記憶に残るかで評価は決まる。
自分と向き合い、企業と向き合い、そして言葉と向き合った末に生まれたESこそが、本当の意味での「通過するES」となる。

ここまで書き上げたなら、もうあなたの中には、最初の内定を勝ち取る力がある。あとはそれを、企業の心にまっすぐ届けるだけだ。

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