選ばれるESは「読みやすさ」と「深さ」のバランスで決まる

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選ばれるESは「読みやすさ」と「深さ」のバランスで決まる


なぜ自分のESは読まれていないのか


多くの学生が「頑張って書いたのに通らない」と悩むES。その原因の多くは、能力や経験の不足ではない。読み手である企業側の立場に立っていないことが根本の問題だ。
企業の採用担当者は、毎日大量のESを読む。その中で、最初の1行目から読みにくかったり、何が言いたいのかがわかりづらいものは、読み進める気持ちすら失われていく。

ESは「自分をアピールする場」と思われがちだが、本質は違う。ESとは、「相手に伝わる形で、自分を他人のフィルターを通して描写すること」に他ならない。どんなに強い経験でも、読みにくければ伝わらないし、ありきたりでも、構造と深さがあれば伝わる。つまり、評価されるESとは、「読みやすさ」と「深さ」を両立した文章だ。

読みやすいESが持つ3つの特徴


読みやすいESには共通する構造がある。どれも特別な技術は不要で、意識すれば誰でも実践できるポイントばかりだ。

1. 結論が先に来ている


「私は〇〇の活動を通じて、調整力を培いました」というように、まず伝えたいこと(結論)を先に示す。これはビジネスの世界では常識であり、ESでも読み手が情報をすぐに理解できる構造になる。
逆に、「ある日私は〜」のような回想や背景から始まる文章は、何を伝えたいのかが分かるまでに時間がかかり、読みにくさを感じさせる。

2. 1文1意で文章が整理されている


長くて複雑な文章は、伝える力を弱める。文を短くし、1つの文では1つの情報だけを伝えることで、読みやすさが劇的に変わる。例えば以下のような違いがある。

悪い例:「私は部活で副キャプテンとして練習メニューの調整とメンバーのスケジュール管理、後輩指導など多くのことを行いました。」

良い例:「私は副キャプテンとして、練習メニューの調整を担当しました。また、メンバーのスケジュール管理や後輩指導にも取り組みました。」

小さな違いだが、読む側にとっての負担が減るだけで印象は大きく変わる。

3. 主語と述語の対応が自然で、読み手の想像が追いつく


「自分が何をしたのか」が主語として明確にされ、それが何を生んだか(述語)まで自然に続いている文章は、読み手にストレスを与えない。
特に、経験を説明する場面では、主語がぼやけて「誰が何をしたのか」が分かりづらい文章が散見される。ESでは、“私”という主語がブレないことが大前提となる。

経験の深さは「振り返りの視点」に現れる


ESの評価は、経験の規模や結果の派手さだけで決まるものではない。大切なのは、「その経験をどのように捉え、どんな学びを得ているか」という内面の深さだ。

たとえば、「アルバイトで売上目標を達成した」という結果だけを書いても、その過程にある「どんな課題があり、どう乗り越え、何を得たのか」が伝わらなければ意味がない。読み手は、「あなたがどんな価値観や行動原理を持つ人なのか」を知りたいのであって、数字の成果を知りたいわけではない。

だからこそ、「そのとき自分はなぜその行動を選んだのか」「どのような葛藤があったのか」「終わったあとにどう考えが変わったのか」といった問いを自分に投げかけてみることが重要だ。ESは事実を書くものではなく、経験に対する“自分なりの解釈”を通して自分を伝える場だという意識が求められる。

読みやすさと深さを両立する書き方の視点


ESを書くとき、多くの人が「どのエピソードを使えば良いか」に迷うが、実はそれ以前に大切なのは、「どんな観点で書くか」の方だ。
同じエピソードでも、「問題解決力を伝える」「協調性を伝える」「忍耐力を伝える」など、視点が変われば構成も表現も変わる。

さらに、自分の強みを伝える場合でも、単なる「私は真面目な性格です」といった表層的な表現では伝わらない。「真面目さがどう発揮されたのか」「その結果、どう周囲と関わったのか」「その姿勢が次の行動にどうつながったのか」まで踏み込むことで、はじめて“深さのある文章”になる。


自分らしさを表現するエピソードの選び方と構成力

経験の中にある「伝える価値」の見つけ方


読みやすさと深さを両立させたESを書くには、何を書くか(経験の選定)と、どう書くか(構成力)の両方が不可欠になる。特にエピソードの選び方は、自分らしさがにじみ出るポイントであり、「その人ならではの視点」が最も発揮される部分でもある。

しかし、多くの学生が「何を書けばよいかわからない」と感じるのは、そもそも“特別な経験がないとダメ”と思い込んでしまっているからだ。
企業が見ているのは、派手な成果や有名な団体での活動ではなく、「どんなことにどんな姿勢で取り組んできたか」という“取り組みの中身”である。

たとえば、飲食店のアルバイトでも、「常連客との会話の中でメニューの改善提案につなげた」といった気づきや行動があれば、十分にESの素材になり得る。ポイントは、自分なりに課題を見つけ、どう考え、どんな行動を取ったかというプロセスだ。そこに、あなただけの価値が宿る。

ESに適したエピソードの3つの条件


1. 自分が主体的に動いた場面があること


ESでは「自分の話」を書く必要があるため、グループ全体の活動よりも、自分が主役として動いた場面が含まれているかが重要になる。
「メンバーの一人として参加していた」だけでは伝えられることが少ない。どんな小さなことでも、自分が意思を持って行動したエピソードを優先して選びたい。

2. 困難や葛藤、乗り越えた過程があること


成果よりも、そこに至るまでの過程こそが評価の対象になる。苦労があったかどうか、うまくいかなかった時にどう向き合ったかといった部分にこそ、思考力や継続力、価値観がにじみ出る。
エピソードの中に、少しでも「迷いや壁」がある場合は、それを中心に構成を組み立てると説得力が増す。

3. その経験から得た学びが、他の場面にも活きていること


一つの経験が、その後の行動や選択にどう影響したかまでを語ると、自己理解が深い印象を与える。
たとえば、「文化祭での準備を通して計画性の重要性を実感した」だけではなく、「その学びを活かしてゼミのプレゼンでは準備工程を細分化して成功させた」といったように、経験の“波及効果”までつなげることで、人物像が立体的に見えてくる。

構成の基本:PREP+課題解決のフレーム


ESの構成として有効なのが、PREP法(Point → Reason → Example → Point)をベースに、課題解決の流れ(課題→行動→結果→学び)を織り交ぜることだ。

たとえば、以下のような流れになる。

結論(強みやアピールポイント):私は課題発見力を持っています。

理由:課題を発見し、改善提案を実行した経験があるからです。

具体例(課題→行動→結果):ゼミの資料作成で進行が滞った際、全体の進捗を可視化する仕組みを提案・導入し、納期通りに仕上げました。

学びと再主張:この経験から、周囲を俯瞰し問題を見つけ出す視点が鍛えられました。

このように、主張を明確にしつつ、エピソードの「背景→行動→結果→気づき」を盛り込むことで、読みやすく説得力のあるESになる。

選んだ経験をどう“就活文脈”に変換するか


エピソードの選定ができたら、次に必要なのはその経験を「就活文脈=企業目線」に変換する工程だ。
ここでやってしまいがちなのが、「自分にとって印象深い経験」をそのまま書いてしまうパターン。たとえば、「〇〇が楽しかった」「みんなと頑張ったことが思い出」といった感情ベースの記述は、読んでも伝わりづらい。

企業が見ているのは、あくまで「この学生を採用することで、どんな価値を組織にもたらしてくれるか」である。その視点で経験を語るには、企業が求める人物像や価値観に合わせた表現が必要になる。

たとえば、「仲間と協力して課題に取り組んだ」だけで終わらせず、「役割の異なるメンバーと調整を重ね、意見の違いをすり合わせた経験を通じて、組織内のコミュニケーション力を高めた」と表現すれば、企業にとっての価値が伝わりやすくなる。

一貫性が人物の信頼感を生む


ES全体において、エピソードや表現がバラバラだと、読み手に「一貫性のない人」という印象を与えてしまう。
逆に、選んだエピソードや書き方に一貫性があれば、「この人は自分を客観的に捉えている」と評価されやすい。

一貫性を持たせるためには、まず「どんな人物として見せたいか」という軸を明確にすることが重要だ。
「挑戦心のある人」「周囲を支える人」「粘り強く物事に取り組む人」など、自分が見せたい方向性を決めた上で、エピソードと構成を設計する。
すると、文章全体にブレがなくなり、伝わりやすさと印象の良さが両立するようになる。

読み手を惹きつける文章に仕上げる技術


読み手が「読みやすい」と感じる文章とは何か


どれほど素晴らしいエピソードを持っていても、それが伝わらなければ意味がない。ESでは、「伝わること」と「読みやすさ」が重要であり、これは単なる文章の上手さとは別物である。

読み手が「この学生はよく考えている」と感じる文章にはいくつか共通点がある。それは、構造が整理されていること、要点が冒頭にあること、余計な説明が削ぎ落とされていること、そして、結論に向かって一貫した筋が通っていることだ。

逆に、読みづらいESの多くは、「思いついたことを時系列に並べただけ」「抽象的な言葉が多く、実態が見えない」「主張がぼやけている」などの特徴を持っている。
文章の“上手さ”ではなく、“伝わりやすさ”を基準に推敲を重ねる必要がある。

文章に説得力をもたせる表現の工夫


ESにおける説得力は、論理性と具体性によって決まる。「頑張った」「成長した」などの抽象的な言葉だけでは、読み手に納得感を与えることは難しい。

たとえば、「課題解決力がある」という主張をするならば、その根拠となる行動や結果を示す必要がある。
「状況を分析し、何がボトルネックかを特定し、改善策を提案して実行した」など、因果関係や意思決定のプロセスを含めて描写すると、読んだ人が納得できる。

また、「行動」と「成果」のつながりを明確にすることも大切だ。単に「努力した」と述べるのではなく、「どんな工夫をし、どう変化し、どんな結果につながったか」を描写することで、読み手に「再現性のある力がある」と印象づけることができる。

アピールしたい強みをにじませるテクニック


ESは、単に出来事を説明する場ではなく、「この学生にはこんな魅力がある」と人事に伝えるためのものだ。そのためには、エピソードの中に自然に“自分の強み”をにじませる必要がある。

ここで重要なのは、「強み」を言葉で直接書きすぎないことだ。「私は協調性があります」と書くよりも、協調的な行動を描写する方が信頼感が増す。
たとえば、「メンバー全員が納得できるよう、議論の土台となる共通認識を整理し、意見の対立を解消する調整役に徹した」という一文の方が、「協調性」の本質が伝わる。

言葉でアピールするよりも、行動で語る。それがESにおける説得力のある表現方法である。

推敲で磨かれる「読みやすさ」と「印象」


初稿を書き終えたあと、最も重要なのが推敲である。文章をより伝わるものにするためには、以下のような視点で見直すことが効果的だ。

一文が長くなりすぎていないか?


読み手の集中力を切らさないためには、一文は60文字以内が目安となる。長すぎる文は意味が伝わりにくく、読み飛ばされやすくなる。適切な位置で句読点を入れ、文章を分けることを意識する。

主語と述語が正しく対応しているか?


文法的な誤りや違和感は、読み手にストレスを与える。「私は〜を行いました。しかし、〜が不足していたため」といった構文の不自然さは、注意して読み直すことで気づけるようになる。

自分以外の第三者にも読んでもらう


自分で書いた文章は、意味が通じているように見えてしまいがちだ。友人やキャリアセンターの職員など、第三者に読んでもらい、伝わるかどうかを確認するのが有効である。

企業目線で整える「伝わるES」


文章としての完成度だけではなく、企業が読むことを前提に最終調整をすることも重要だ。たとえば、以下のような観点でチェックすることで、「伝わるES」に仕上がっていく。

企業が求める人物像に合致したエピソードか?

アピールしている力が、その企業の仕事に活かせそうか?

表現に嘘や誇張がなく、等身大で信頼感があるか?

文字数制限の中で、無駄なく情報を伝えているか?

特に「等身大であること」は、近年ますます重視されている。背伸びをして見せるよりも、自分なりの視点や気づきを丁寧に語ることで、共感と納得を得られるESになる。

ESを活かす戦略と、内定につなげる視点


ただ書くだけで終わらない、ESを「活かす」発想


エントリーシート(ES)は、書き終えた時点がゴールではない。むしろ、そこからが本当のスタートだ。
多くの学生が、ESを「提出するもの」「評価されるもの」として完結させてしまっているが、それだけでは十分ではない。
完成度の高いESは、自分の強みや価値観を整理する「武器」になり、それは面接や企業とのコミュニケーションでも活きてくる。

完成したESは、次のような活用が可能だ。

面接時の自己紹介や深掘り質問への回答の土台になる

OB/OG訪問の際、自分の軸を伝えるための材料になる

他社のESにアレンジして使える「型」になる

書いたESを再利用・再編集する視点を持つことで、就活全体のスピードも精度も格段に上がる。

志望企業に合わせて再構築する柔軟性


ESの最大の落とし穴は、「1つの文章をすべての企業に使い回す」ことだ。
同じエピソードでも、企業によって伝えるべきニュアンスや文脈が異なる。たとえば、営業職を志望する企業には「行動力」や「対人調整力」を前面に出すべきだし、企画職なら「構想力」や「情報収集力」を際立たせるべきだ。

この「チューニング」が甘いESは、内容自体は立派でも企業から見ると“刺さらない”ものになってしまう。
では、どうすれば柔軟にESをアレンジできるのか。それには以下の視点が有効だ。

アピールポイントの“見せる角度”を変える


同じエピソードでも、どの部分を軸にするかで印象は大きく変わる。「苦労を乗り越えた過程」を強調するのか、「周囲との連携」を強調するのか、意識して変えていくことが重要だ。

企業の求める人物像を先に理解する


企業説明会、採用HP、社員インタビューなどから、「この会社はどんな人材を欲しているのか」を徹底的にリサーチする。それに合わせて言葉選びや構成を変えることで、“響くES”に変わっていく。

ESは「面接の地図」になる


選考が進むと、多くの企業ではESに沿って面接が行われる。つまり、ESは単なる書類ではなく、面接官との“共通の土台”になる情報なのだ。

面接官はESをもとに質問を考える。だからこそ、ESには“聞かれたいこと”をあえて含ませる工夫が有効になる。

「なぜその選択をしたのか?」と問いが発生しそうな分岐点を意図的に入れる

感情の動きや価値観の変化を描くことで、人間性の深掘りを誘導する

こうした仕掛けを入れることで、ESは“会話の起点”となり、ただの提出物から“コミュニケーションツール”へと進化する。

データで見る、ESが与える内定率への影響


ESの完成度が高い学生ほど、内定獲得率が高いのは各種調査でも明らかになっている。ある大手人材会社の調査によると、ES通過率が60%を超える学生は、最終的な内定率が平均の1.7倍になるという。
さらに、ESと面接の一貫性が高い学生ほど、「信頼できる」「入社後の活躍がイメージできる」と評価されやすく、内定につながる傾向もある。

これは裏を返せば、ESの時点で自分を整理し、伝える訓練ができていれば、選考全体で優位に立てるということだ。
自己理解、経験の言語化、強みの伝達、企業理解。ESにはそのすべてが詰まっており、だからこそ“最初の内定”を左右する力を持っている。

まとめ:最初の内定は「磨かれたES」から始まる


最初の内定を取るために必要なのは、特別な経歴や目立つ成果ではない。企業が知りたいのは、「この学生は何を大切にしてきたか」「どんな経験をどう捉えているか」「入社後にどう活躍できそうか」という点だ。
それを、読み手の視点に立って、論理的かつ具体的に伝える文章。それがエントリーシートであり、最初の内定への扉を開く鍵である。

ESは、書き方を学び、経験を整理し、推敲を重ね、企業に合わせて調整することで、必ず“選ばれる一枚”になる。
そして、その1枚が、面接へ、評価へ、そして内定へとつながっていく。

どんな学生にも伝える力はある。必要なのは、それを「ESという形」にする技術と意識だ。

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