「通るES」とは何か?“型”ではなく“刺さり方”に注目せよ

Post Thumbnail

「通るES」とは何か?“型”ではなく“刺さり方”に注目せよ


ESを“通過点”ではなく“第一接点”と捉える


多くの学生が、エントリーシート(以下、ES)を「とりあえず通過するための課題」と捉えている。確かに、ESは面接に進むための足切り手段として機能する。しかし、企業にとっては「この学生と話す価値があるか」を判断する最初の資料であり、採用活動における“最初の接点”である。

つまり、ESの役割は「面接につなぐため」だけではない。「面接で会ってみたい」と思わせることが、真の目的となる。逆に言えば、“正しい構成”や“定番の言い回し”をなぞっただけでは、最初の一社を突破するのは難しいのが現実だ。

では、企業はESのどこを見ているのか。第一に「学生の考え方」、次に「経験の背景」、そして「文章としての説得力」である。派手な成果よりも、「なぜそう考え、どう行動したか」が一貫していれば、どんな経験でも評価されうる。

「企業が知りたいこと」と「学生が書きたいこと」はズレている


ESが通らない原因の一つは、“伝えるべきこと”と“書きたいこと”がズレていることにある。学生の多くが「この経験を伝えたい」「自分の強みをアピールしたい」と考えて書くが、企業は「この人はうちに合うか」「職場で成果を出しそうか」という視点で読んでいる。

たとえば「リーダー経験を書いたのに落ちた」というケース。これは「なぜその行動を取ったのか」「その結果、どんなチームに貢献できたのか」が不明確なまま、「役職名」だけでアピールしているケースが多い。

また、「強み」と「再現性」が結びついていないESも通過しにくい。たとえば「粘り強い性格」を強みとして書いたとしても、それがどんな仕事でどう役立つか、という文脈がなければ企業側には響かない。

重要なのは、「企業目線で読むと、何が伝わるのか?」を常に意識することだ。

ESで必要なのは“言葉の正しさ”より“選び方”


ESの文章は丁寧であることが大切だが、過剰にかしこまったり、言い回しに凝ったりする必要はない。むしろ、「自分の考えを、自分の言葉で語る」ことのほうが重要である。

よく見かけるのが、ネットで拾ったテンプレをそのまま当てはめたような文章だ。たとえば「貴社の理念に共感し…」という文言を多くの学生が使うが、その背景や具体的な接点がなければ説得力は生まれない。

また、「ですます」や「だ・である」の表記を混在させる、“字数を埋めるための文章”も避けたい。文字数を満たすことが目的になってしまうと、本来伝えるべきことがぼやけてしまう。

ESにおける言葉選びは、「何を伝えるか」以上に「どこまで具体的に書けるか」で決まる。抽象的な表現(例:「挑戦した」「努力した」)は、必ず具体化するように心がけよう。

「何を書くか」より「どう書くか」で差がつく


エピソードの内容が目立たなくても、構成と掘り下げ方で差がつく。たとえば、以下のような構成は、読みやすく伝わりやすい。

【背景】:どんな状況で、何を課題に感じたか

【行動】:どんな考えで、どんな工夫をして動いたか

【結果】:その結果どうなり、何を得たか

【学び】:今後にどう活かせると考えているか

この流れに沿えば、派手な成果がなくても説得力のある文章が組み立てられる。ポイントは、すべてに“自分の視点”を入れること。「誰が見ても同じ経験」ではなく、「自分がどう考えたか」を伝えることが、評価を分ける。

たとえば「売上アップに貢献した」よりも、「なぜその手法を選んだのか」「どんな反応があったのか」など、プロセスに焦点を当てると、読んだ人に“その人らしさ”が伝わりやすくなる。

“普通の経験”を“印象に残るエピソード”に変える視点


企業は「特別な学生」を探しているわけではない。むしろ「自社で活躍してくれそうな人材」「一緒に働きたいと思える人」を見極めたいと思っている。そのためには、日常的な経験をどれだけ魅力的に伝えられるかが重要になる。

たとえば、「コンビニバイトで品出しをしていた」という経験でも、「発注ミスを減らすためにPOPの色分けルールを変えた」という工夫があれば、改善提案力や観察力として伝えられる。

小さな経験も、視点と構成次第で大きな説得力を持つ。自分の過去を棚卸しし、具体的な工夫や気づきを見つけ出すことが、ES通過の鍵となる。

企業の“読みたい”ESに変えるための視点

自己PRと志望動機の“役割の違い”を理解する

エントリーシートで求められる代表的な項目といえば、自己PRと志望動機である。しかし、多くの学生がこの2つを混同し、どちらも似たような内容になってしまっている。まず押さえておきたいのは、それぞれの“役割の違い”だ。

自己PRは「あなたがどんな人間か」を伝える場であり、志望動機は「なぜその企業で働きたいのか」を伝える場である。この基本構造を理解していないと、ES全体の構成が曖昧になり、結果として評価されにくい内容になってしまう。

自己PRでは「人となり」「強み」「行動特性」を明確に表現する必要がある。反対に志望動機では、「企業理解」「業界理解」「働くビジョン」を見せることが重要になる。この視点を切り替えるだけで、ES全体の伝わり方は劇的に変わる。

自己PRで“伝えるべきこと”を整理する

自己PRを書く際に大切なのは、単なるスキルの羅列ではなく、「どんな強みを持ち」「それをどう発揮し」「その結果どうなったのか」という因果関係を示すことである。

たとえば、以下のような構造を意識すると、伝わりやすい自己PRになる。

強み(結論)

強みを示す行動やエピソード(根拠)

結果と学び(再現性のある資質として示す)

この流れを明確にすると、読み手は「この人はなぜこの強みを持っているのか」「どういう環境で発揮されるのか」を理解しやすくなる。特に、最初の内定を目指すうえでは、自分を評価してもらう“きっかけ”として自己PRの印象が非常に大きい。

また、強みは特別である必要はない。問題解決力、継続力、柔軟性、協調性など、どこにでもありそうなものでも、「なぜそれがあなたの強みなのか」「どう活かされてきたか」を言語化できれば、それは十分に差別化につながる。

志望動機に“個性”を織り込む方法

志望動機においてよく見られる失敗は、「どの企業にも当てはまる内容になってしまう」ことだ。これは、企業が最も嫌うタイプのESであり、読み手に「本気度が感じられない」と思わせてしまう。

そこで重要なのが、「自分がこの企業で働きたい理由」と「この企業が自分を求める理由」の両方を言語化することだ。たとえば、以下のような視点で志望動機を構成すると、読み手にとって納得感のある内容になる。

なぜその業界なのか

なぜその企業なのか(他社と違う点)

自分の強みがどのように活かせるか

この3点を組み合わせることで、“自分と企業の接点”が明確になり、ESの説得力が格段に上がる。

志望動機を考える際は、企業のビジョンや文化、働く社員の特徴、業務の進め方などから「共感できる部分」を探し、それを“自分の価値観”と結びつけるとよい。こうすることで、「他の学生にはない、自分らしい志望動機」になる。

“誰でも通る内容”は最初の内定を遠ざける

多くの学生が書きがちな、一般的すぎる自己PRや志望動機は、採用担当者の目に留まりづらい。これは、自分がどんな人物であるか、なぜこの企業を選ぶのかという“理由の解像度”が低いためだ。

たとえば、「貴社の安定性に惹かれました」「説明会の雰囲気が良かったから」というだけの志望動機は、学生自身の価値観や行動指針を表していない。企業は、その学生がどんな軸で就活をしているのかを見極めたいのであって、「無難な答え」を求めているわけではない。

“あなただからこのESを書いた”という納得感があるかどうか。それが、最初の内定につながるかどうかを左右する。

最初の一社を狙うなら“相性”を重視

最初の内定を目指すなら、「相性の良い企業」を見つけることが重要だ。そのためには、自分の価値観や働き方に合った企業を選ぶことが前提になる。そしてその企業に対して、「自分だからこそ貢献できること」を明確に伝えることが求められる。

自己PRと志望動機は、エントリーシートにおける“両輪”である。片方だけが強くても効果は薄い。両者のバランスが取れて初めて、「会ってみたい」と思われる学生になる。

通過するESの裏側にある“共通構造”


「伝えたいこと」ではなく「伝わること」を意識する


エントリーシート(ES)を書くとき、つい自分の言いたいことを並べてしまいがちだが、重要なのは「相手に伝わるかどうか」である。採用担当者は、毎日何十枚ものESを読む。読みやすく、構造が明確で、内容に納得感があるものが自然と印象に残る。

そのため、ESに必要なのは「構造化されたストーリー」と「一貫性ある論理展開」だ。感情や熱意だけに頼るのではなく、「結論 → 理由 → 具体例 → 再結論」というシンプルな流れを押さえることで、読み手に負荷をかけない文章が完成する。

自己PRは「強みの証明書」ではなく「再現性の提示」


企業が自己PRで知りたいのは、「この学生は、うちの会社で成果を出せるか?」という一点に尽きる。つまり、自己PRは単に過去のエピソードを披露する場ではなく、「自分の強みは今後も発揮できる」と証明する場でもある。

そのため、ESに書くべきは過去の“実績”よりも、“再現性”だ。たとえば以下のような構成で書くと、再現性が自然と伝わる。

強みをひとことで(結論)

その強みが発揮された場面(具体例)

なぜその行動を取ったのか(価値観)

その結果どうなったか(成果)

その経験を今後どう活かせるか(未来への展望)

この構成は、企業が「この学生を採用したら、どう活躍してくれるか」を想像しやすくなる。また、ESが通る学生は、この型に加えて「自分らしい言葉」を使っており、ありきたりな表現を避けている傾向がある。

志望動機は“企業理解”と“自己理解”の交差点


志望動機で評価されるのは、「その企業でなければならない理由」と「その企業で活躍する姿が想像できるか」である。ここで重要なのは、「企業理解」と「自己理解」を組み合わせる視点だ。

例えば、企業のビジョン・事業内容・文化などの中で、自分の価値観と一致する部分をピックアップし、それと自分の強みや経験とをリンクさせて志望動機を構成する。

例:「チームで目標達成を重視する企業文化に共感した」→「自分も部活動でリーダーとしてチームをまとめ、成果を上げた経験がある」→「その経験を活かし、貴社でも成果を出せると考えている」

このように、企業が求める人物像に、自分の経験がどうフィットするかを“具体的な言葉”で示すことで、採用担当者にとって「納得できる動機」になる。

文字数制限の中で差をつける表現の工夫


ESの文字数は制限があることが多いため、その中でどれだけ“密度の高い情報”を入れられるかが重要となる。よくある失敗は、「背景説明に文字数を割きすぎて、本題に入る前に終わってしまう」ことだ。

背景を伝える場合は、結論から入ることで文字数を節約できる。

✕「私は◯◯部に所属しており、そこで先輩との関係に悩んでいました。しかし、私は…」
〇「私は人間関係の摩擦を、積極的な対話によって乗り越えてきました」

このように、前置きは短く、伝えたい本質に早く辿りつくことが、読まれるESの鉄則である。また、「〜しました」「〜と思いました」などの平坦な語尾を避け、「〜を実現しました」「〜を考え抜きました」といった能動的な言葉を使うことで、文章に説得力が増す。

ES添削でよく指摘される5つのポイント


ESがなかなか通らない場合、次のような点が原因となっていることが多い。

結論が曖昧で、印象に残らない

エピソードが具体的でなく、抽象的

話の展開が飛躍していて、読みづらい

“自分の言葉”がなく、テンプレートのよう

「なぜその企業か」が伝わらない

これらを意識して、書いた後に自己添削するだけでも、大きな改善につながる。さらに可能であれば、就活支援サービスや信頼できる人に添削を依頼し、客観的な視点でのフィードバックを受けることが望ましい。

ES提出後に差がつく行動と最終仕上げ


提出したら終わりではない。提出後のアクションが内定を近づける


エントリーシート(ES)を提出した時点で「とりあえず終わった」と安心してしまう学生は多い。しかし、最初の内定にたどり着く学生は、ES提出後にも“次の戦略的行動”を行っている。

まず重要なのが「面接に向けた準備」だ。ESが通過したということは、その内容が次の選考(主に面接)の材料になるということ。面接官はESに書かれた内容をもとに深掘り質問をしてくるため、「書いた内容を自分の言葉で語れる準備」が欠かせない。

また、ESの内容と志望企業の“接点”を、より深く掘り下げておくことも効果的だ。たとえば、ES提出後に改めて企業のIR情報や事業戦略、最新のニュースリリースなどを確認し、面接での会話に活かせる視点を持っておくことで、話の深みが変わる。

志望度の高さは「行動」で伝える


企業によっては、ES提出後に説明会参加やOB訪問の機会が設けられている場合がある。そうした機会に積極的に参加することで、企業側に志望度の高さを伝えることができる。

また、志望度の高さは「ESの再提出」や「追加提出」ではなく、「質の高い対話」で伝える方が効果的だ。採用担当者と話す場面では、「ESではこう書いたが、さらにこういうことを調べて、こう考えるようになった」など、提出後に得た新しい知見を自分の言葉で伝えることができれば、単なるテンプレート応募とは違う印象を与えられる。

行動量は熱意の裏付けであり、情報を自分の中で“思考し続けているか”が評価される。

フィードバックの活用とESの磨き上げ


たとえ最初のESが通らなかったとしても、それは「次に向けて強化できるチャンス」である。落選通知が届いたときに確認したいのは、どの企業のESが通り、どの企業では落ちたか。その傾向を分析し、書き方を調整していく。

特に以下のような視点でフィードバックを得ることが、次の改善につながる。

結論が抽象的すぎないか

強みと志望動機が一貫しているか

自分の“らしさ”がにじみ出ているか

企業とのマッチポイントが明確か

一度書いたESは“使い回し”たくなるが、最初の内定を得るまでは、企業ごとに微調整していく粘り強さが鍵となる。特に志望動機の部分だけでもカスタマイズを続けるだけで、通過率は大きく変わる。

最初の内定につながるES戦略の共通点


これまでのすべてのポイントを踏まえると、最初の内定を獲得した学生のESには共通する「戦略の軸」がある。

自己分析を土台にした「自分らしい言語化」

経験を抽象化せず、具体例に基づく説得力

志望企業ごとの徹底した企業研究と一貫性

文字数制限内でも伝わる構成と簡潔な表現

提出後の面接対策や情報更新による精度向上

つまり、「書いて終わり」ではなく、「書いてからが本番」という姿勢で、就活全体を捉えていることが最大のポイントである。

まとめ


ESは、就活において最初の大きな壁であり、最初の内定を左右する大切な要素だ。特別な経歴がなくても、構造と戦略さえ整っていれば、誰でも十分に突破できる。むしろ、実績よりも“伝える力”と“準備力”が評価されるのがES選考の本質だと言える。

最初の内定を取るために大切なのは、「通過するESとは何か」を理解し、自分の言葉でその要素を取り入れていくこと。そして、提出後も学びと修正を繰り返しながら、自分自身を磨き上げていく姿勢だ。

ESは単なる書類ではない。「あなた自身を語る最初のメディア」であり、その質は就活全体の成果に直結する。最初の内定は、あなたの“最初の言語化の成功体験”から始まる。

この記事を友達におしえる!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です